マネジメント

カフェを開業するために必要な開業資金を試算してみた

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月26日

飲食店を開業するためには大きな額の開業費用がかかると言われていますが、具体的にイメージは持っていらっしゃいますか?
なんとなくたくさんのお金がかかりそうだけど、実際に何にどれくらいかかるのか、イメージがつきにくいと思います。
今回は、大阪の中心部から近いエリアに小さなカフェを開業するとした時に、どれくらいの開業費用がかかるのかをシミュレーションしながら、開業費用のイメージを具体的に持ってもらえるように具体例で解説してみます。

飲食店の開業資金

基本的に飲食店を開業しようとすると多額の開業資金が必要となります。
規模や業種・業態によって費用感は変わってきますが、小さなお店でコストをできる限り抑えたとしても数百万円、大きめのお店なら数千万円の開業費用が変わってきます。
開業費用をどのように見込むかは、お店の成否にも関わる重要な試算です。
今回は、比較的小資本でできると言われているカフェを安心して経営できるだけの開業資金がどれくらいかを試算してみますので、参考にしてみてください。
なお、開業費用に関しては、以下の記事が参考になりますので、ご覧ください。
参考記事:飲食店が開業資金を調達するために知っておくべき傾向と対策
参考記事:飲食店の開業準備時に知っておくべき開業資金の計算方法

Step1 店舗物件

まずは、店舗の物件選びから始めましょう。
今回は、大阪市で中心部からそれほど離れていない場所で、カフェを開くということですので、エリアから絞り込んでいきたいと思います。
サンプルで、大阪市の中心部からそれほど離れていないエリアで、飲食店可能な1階の店舗物件、面積が10〜20坪、徒歩5分圏内という条件で検索してみました。

交通
(沿線/駅/バス停)
大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線 長堀橋駅 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線 松屋町駅 阪急電鉄千里線 天神橋筋六丁目駅 大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線 長堀橋駅 大阪市営地下鉄谷町線 天神橋筋六丁目駅
徒歩 5分 5分 4分 2分 3分
賃料/管理費等 16万円 18万円 23万円 27万円 30万円
坪単価 1.3万円 1.4万円 1.5万円 1.7万円 1.9万円
礼金/敷金 60万円 50万円 120万円 145万円 150万円
面積 13坪 13坪 15坪 16坪 16坪
築年数 10年 15年 55年 35年 3年

今回はあくまでサンプル5件を抽出していますので、もっといい物件もあるかもしれませんが、こちらでみていきましょう。
まず、大阪市中心部周辺に1階で10〜20坪の店舗物件を借りようとすると、坪単価で1万円代後半くらいが相場になっているようです。敷金・礼金などの一時的に必要となるものは概ね100万円前後のようです。
したがって、店舗物件の賃借にかかる開業費用の目安としては、15坪で月額賃料が23万円敷金・礼金を120万円とすることにします。また、不動産仲介手数料を賃料1ヶ月分の23万円を見込みます。

Step2 内装工事

店舗が決まったら、次は内装工事費用です。
10坪少々の小さなカフェの場合、内装工事の坪単価は、概ね20万円〜50万円が相場となっています。
内装には手を抜きたくないのですが、やはり内装工事のコストは気になります。
オシャレに仕上げたいもののできるだけコストを抑えるために、天井はコンクリートむき出しのままにしたりして、内装工事には坪単価で30万円で見積もってみようと思います。15坪×30万円=450万円とすることにします。
なお、居抜き物件を選択した場合は、内装工事費用を大きく抑えることができます。
一方で、居抜き物件は、賃貸借契約の時、前のオーナーに造作譲渡料を支払うことになるケースがよくあります。また、居抜き物件であっても、お店を好みの形に変えていくために、内装工事等を行うこともありますので、一概に居抜き物件の方がコストが抑えられるということにはなりません。
しかし、一般的には居抜き物件の方がコストを抑えることができるケースが多いので、開業費用を抑えたい方は、居抜き物件の検討をされてみてはいかがでしょうか?
以下の記事が参考になります。
参考記事:飲食店の開業時に居抜き物件を選ぶ際の留意点と判断のポイント

Step3 お店の家具や機器

次にお店の家具や厨房機器を揃えます。
家具や厨房機器などはできるだけ安く抑えたいので中古を中心に揃えていきたいと思います。
まずは、テーブルと椅子ですが、座席数は、テーブル4つ×4席の16席を用意します。テーブルと椅子のセットを中古の家具屋さんで1セット7万円×4=28万円です。
また、コーヒーマシンや厨房機器、冷蔵庫、製氷機、食器などを専門のリサイクルショップで揃えたところ、全部で約200万円ほどかかるようです。
なお、これらの新品で家具や機器を揃えるとかなり高額になって今います。
最近は、中古品の流通も数が増えており、またそれほど古くなっていなかったり、傷がついていないような中古品も多くあるため、初期投資を抑えたお店の開業をするのであれば、中古品の選択は欠かせないものとなるでしょう。
トータルの予算を考えながら、リサイクルショップを活用してみてください。
その他色々揃えたいものがあるので、全部で250万円ほど見込むこととします。

Step4 運転資金

運転資金とは、スタッフの給料や仕入先への仕入代金の支払い、家賃や水道光熱費の支払いなど毎月出ていく支払いに当てるための資金をいいます。
売上が見込めると、運転資金は売上代金から支払うことができるようになりますが、開店してから売上が起動に乗るまでの間、これらの運転資金を支払うためのお金を手当てしておく必要があります。 もし、開店してから起動に乗るまでの期間の運転資金を手当てしていなかったら、開店当日からお客様がどんどん来店し売上が順調に推移しないとお金が足りなくなります。
したがって、お店が起動に乗るまで2〜3ヶ月はかかるものとして、その間の運転資金を準備しておけば、安心して経営することができます

開業までの運転資金

まずは、店舗物件の契約から開店までの期間のうち、発生する家賃が1ヶ月分発生するため、月額家賃の1ヶ月分23万円を見込んでおきます。
また、開店までに仕入れておく食材や消耗品などがあり、これを30万円と見込みます。
これ以外にも、開店までにかかる諸経費(交通費や交際費、名刺やチラシ作成などの広告費)を考慮して、60万円を見込みます。

開業から軌道に乗るまで運転資金

家賃については、先ほど月額23万円で見込みました。
スタッフは、アルバイトを2人採用する予定ですので、一人当たり13万円×2人=26万円を1ヶ月あたりの人件費として見込むこととします。
水道光熱費も季節によって変動しますが、結構かかるため、月10万円を見込んでおきます。
これらをトータルすると、毎月の運転資金は60万円となります。
お店の経営が安定するまでを2ヶ月と想定して、60万円×2ヶ月=120万円が軌道に乗るまでの運転資金です。

小さなカフェを開業するための開業資金は約1,000万円

大阪市の中心部からほど近い場所に15坪ほどの小さなカフェを開業するための資金シミュレーションをまとめてみます。

項目 金額
店舗の敷金・礼金 120万円
不動産仲介手数料 23万円
内装工事 450万円
お店の家具や機器 250万円
開業までの運転資金 60万円
開業から軌道に乗るまでの運転資金 120万円
合計 1,023万円

このように、小さなカフェを開業するためには約1,000万円の開業資金が必要というシミュレーション結果となりました。
今回は、場所が大阪の中心部から近かったり、スケルトン物件で内装工事をしたりという点で比較的開業費用がかさむ事例ではありますが、やはり飲食店を余裕を持って開業しようとすると、それなりの開業費用を準備する必要があることがご理解いただけたかと思います。
カフェに限らず、飲食店をオープンするためには、お金の手当をしっかりとして、安定した経営のスタートが切れるように時間をかけてじっくり準備をしていきましょう。

小さなお店が数字を読んだ経営に変わる便利なツールをご紹介

小さなお店のお金の問題

小さなお店でもお客様が増えて、売上が増えてくると必ず頭を悩ませるのが、お金の問題です。
特に、何か新しいことをするときの経費や、従業員に関するお金はシビアな問題がつきものです。
例えば、スタッフを採用するのであれば、

  • 給料はいくらにすればいい?
  • 頑張っているから昇給してあげたい・・・
  • 賞与はどれくらい出すべき?

というように、お金のことで悩みは尽きません。
だからと言って、スタッフを採用しなかったり、新しいことをしないとなると、事業は成長しませんし、何より仕事が回らなくなってしまいます。
ここで重要になるのが、しっかりお金(数字)を意識しながら、経営をシミュレーションすることです。
数字を読みながら、経費や給与などをかけるコストを決めていくことによって、お金で失敗するリスクを大きく下げることができます。

簡単に経営をシミュレーションできるツールを使う

一般的に経営をシミュレーションしようとすると、会計ソフトから会計データをエクセルなどの表計算ソフトにエクスポートし、数字を動かしていくことでお金をきっちり残しながら、お金の使い方を考えることになります。エクセルは非常に便利なツールで、会計データがあれば、基本的なお金の動きの分析はできますし、編集などもできますが、いくつか難点があります。
まず1点目ですが、お金の動きを分析をするためには、ある程度の会計の知識が必要になることです。特に、管理会計の知識がないと、売上を増やしたら、コストがどのように動いて、利益がどう変わるかといったあたりの関係がよくわからなくなって、手を焼くことになるかもしれません。
次に、エクセルは非常に優れたツールでゼロベースでいろいろなことができるのですが、裏を返せば、ゼロから作らないといけないので、結構大変な作業になってしまいがちです。私たちも以前はエクセルで経営シミュレーションのサポートをしていましたが、私たちプロがやっても、1社あたり毎月1〜2時間はエクセルの作業時間を費やしていました。
このように、経営のシミュレーションをエクセルでしようとするといくつかのハードルがあって、せっかく経営にとって非常に有効な手法である経営分析が広まらない一つの要因でもありました。
そこで、ご紹介したいのは、簡単に経営の数字を把握できるクラウドツールManageboardです。
このクラウドツールを使えば、会計ソフトからデータを連携すると5分で、会計の専門知識がなくても簡単に経営をシミュレーションすることができます。
無料で利用することもできますので、経営をシミュレーションしながら、数字を読んだ経営をしたいという方は、一度試してみてください。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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