マネジメント

飲食店の開業時に居抜き物件を選ぶ際の留意点と判断のポイント

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月27日

飲食店を開業するときにまずは大きな選択として、お店の物件選びがあります。
店舗物件を賃借する場合には、大きく分けてスケルトンと居抜き物件のいずれを選択するかがポイントとなります。
今回は、居抜き物件を選択する場合の留意点やポイントを解説します。

居抜き物件とは?

飲食店を開業するときに大きなポイントとなる店舗物件選びですが、不動産屋さんを回ったり、インターネットで調べたりしていると、「居抜き物件」という物件をよく目にします。
店舗用の賃貸物件の場合は、スケルトン状態での引渡しと返却が基本となります。
スケルトンとは、店舗内の壁や天井、床、各種設備などが何もないコンクリートの打ちっぱなしの状態であり、借主は、ビルのオーナーからスケルトン状態で引き渡され、退去するときには、同じようなスケルトンの状態で返却することになります。
ただ、店舗の内装や設備には1,000万円以上かかっていることもよくあり、これをスケルトンの状態にするために解体・撤去費用までかけるのはもったいないということで、店舗物件のオーナー、前のお店の経営者(前の店舗物件の借主)、新しいお店の経営者(次の店舗物件の借主)の3社が合意した場合は、前の内装や設備を残したまま、新しいお店の経営者に引き継ぐことができるようになります。
このような物件を、居抜き物件と言います。
そのままの状態で営業を開始できるくらいの物件から、一部の設備だけが残されていて、手を入れないとそのままでは営業できないような物件までいろいろな状態の居抜き物件がありますので、ご留意ください。

居抜き物件のメリット

居抜き物件は、物件ごとに状態も条件もさまざまですが、一般的に言われているメリットを整理しておきましょう。

初期費用を安く済ますことができる

まず、居抜き物件の一番のメリットは、お店を営業するまでにかかる内装工事や厨房機器、電気工事、家具などの初期投資費用を大きくおさえることができるという点が挙げられます。
店舗の規模や業種にもよりますが、店舗をスケルトンの状態から営業できるようにするまでにかかるコストは、小さいお店でも数百万円、30席程度のお店であれば、1,000万円を超える場合もよくありますが、居抜き物件を選べば、この初期費用を大きく圧縮することができます。
資金力がない場合やできるだけリスクを押さえた経営をしたいという方には大きなメリットとなります。

開店までのスピードを上げる

また、居抜き物件のメリットとしては、開店までのスピードを上げることができる点もメリットとして挙げられます。
スケルトンの状態から、店舗のレイアウトを設計したり、内装工事や家具選びなどをしていると1〜2ヶ月程度かかってしまいます。
1〜2ヶ月の間、売上をあげることができない上に、家賃などの固定費が発生するとなると結構大きな負担になります。
居抜き物件を選べば、この期間をできるだけ短くすることができるようになります。

居抜き物件のデメリット

このように、居抜き物件は飲食店を開業するにあたって初期段階でかかるコストを大きく押さえ、スタート段階での飲食店経営を安定化させることへの大きなメリットがあります。
ただ、いいことばかりではありません。ここでは居抜き物件のデメリットを挙げてみたいと思います。

お店のコンセプトに合わせるのが大変

居抜き物件は、内装や厨房機器、テーブルやイスの家具など、店舗を始めるにあたって必要なものがたくさんついてきます。これは、裏を返せば、すでにある程度できている店舗でのスタートを強いられることになるため、自分がやりたいお店のコンセプトと合わせていくのが大変となるケースがよくあります。
例えば、ミニマルデザインのイタリアレストランをオープンしたかったけど、居抜き物件のテイストが装飾が施された家具が中心となったインテリアであり、イメージが少し違ってしまうといったような、アンマッチが起こってしまいます。
居抜き物件でスタートさせながら、自分のコンセプトに合わせていくように、厨房機器や家具などを買い足していくことも可能ですが、大幅な入れ替えが必要になるようであれば、初めからスケルトン物件でスタートした方が安く上がったということにもなりかねません。
居抜き物件が自分のやりたいお店のコンセプトに近いかどうかは、十分に検討してから選択した方が無難です。

飲食店経営に合っていない物件かもしれない

もし、前のテナント店舗がオープンしてすぐに閉店したような店舗であれば、その閉店の理由が気になるところです。
前のテナント店舗の閉店理由が、味が悪い、接客が悪い、オーナーが他の事業で失敗したなど、前の店舗経営に起因する理由であれば問題ないかもしれませんが、立地が悪かったり、メインの通りからの視覚性が悪いなど店舗物件自体に問題があり、そもそも飲食店の営業に向いていない店舗物件であれば、いくら居抜き物件でコストをおさえることができても、その後の店舗経営が前途多難になることも想定されます。
初期投資の安さだけで判断するのではなく、その後の店舗経営を行う目線から判断するようにしましょう。

機器や設備が古い、すぐ故障する

飲食店の厨房機器や電気設備、空調などはハードに使われていることも想定されます。数年に渡りフルに稼働しているような設備であれば、すぐに故障して買い替えが必要になったりする可能性も十分にあります。
主な厨房機器や電気設備については、いつから使われているかをチェックするようにしましょう。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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