マネジメント

ハローワークで初めて求人する時に気をつけるべき年齢と性別の制限

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月25日

ハローワークで従業員を採用する時に、募集要項や求人申込書を書きます。
採用したい人材のイメージを書いていくことになると思いますが、実は、この時、年齢と性別に制限を設けることが禁止されています。
今回は、求人する時に禁止されている年齢制限と性別制限について解説したいと思います。

禁止されているのは「年齢」と「性別」の制限

法律で年齢の制限と性別の制限を設けた従業員の募集・採用が禁止されています。
したがって、単純に30歳以下の人材が欲しい、とか男性が欲しいと言った求人が法律上できなくなっています。
ハローワークでこんな人を採用したい、というイメージを持っていても、それが年齢や性別を絞り込むような求人であれば原則として禁止されています。
この内容と対策を詳しくみてみましょう。
ちなみに、ハローワークでの求人に限らず、どのような場合であっても求人の際は年齢と性別の制限は課せられますので注意してください。

年齢による制限

平成19年10月から雇用対策法において従業員を募集する際に年齢制限の禁止されるようになりました。
これによって、従業員を採用する時は、「年齢問わず」が原則となりました。
この規制によって困ってしまう事業主や企業も多いのではないでしょうか?
しかし、ご安心ください。この規制には例外が設けられており、合理的な理由があれば、年齢制限をしてもよいというケースが認められています。
その例外が、以下の6つです。

法律で定められている例外規定 OKとなる事例 
定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合 (定年年齢が60歳の会社が)「60歳以下の方を募集します」はOK
労働基準法等の法律により年齢制限が設けられている場合  (18歳未満の方が就業できない仕事において)「18歳以上の方を募集します」はOK 
長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合 「対象者の職業経験を不問とする」と「新規学卒者以外のものにあっては、新規学卒者と同等の処遇であること」の2点を満たせばOK 
技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合  特殊技能を要する会社で、35〜39歳の従業員が少ない場合に、「35〜39歳の方を募集します」はOK
芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合 演劇における演出上の必要性がある場合に「子役のために、18歳以下の方を募集します」はOK 
60歳以上の高年齢者又は特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る。)の対象となる者に限定して募集・採用する場合 「60歳以上の方を募集します」や「若年者トライアル雇用の対象として40歳未満の方を募集します」はOK 

どれも、そのまま適用できないケースが多いのではないでしょうか。

性別による制限

男女雇用機会均等法において、従業員の募集・採用において女性に対する差別を禁止し、男女の均等な取り扱いが求められています。
したがって、原則として求人においては男女の制限は設けることができません
しかし、こちらも業務によっては、男性しか難しい業務、女性しか難しい業務など、どうしても避けられないこともあるのではないでしょうか?
このようなこともあり、以下のケースでは募集及び採用において性別によって異なる取り扱いをすることは、法律違反とならないとされています。

  • 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務
  • 守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務
  • 宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上、その他の業務の性質上、男女のいずれかのみに従事させる必要性がある場合
  • 労働基準法や保健師助産師看護師法により男性を就業させることができない場合
  • 風俗、風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合、その他特別の事情により労働者の性別に均等な取扱いをすることが困難である場合

こちらも、一応例外としてあげられていますが、そのまま適用できるケースはそれほど多くないかもしれません。

対応策

このように、従業員を募集・採用する時の年齢と性別の制限は法律で定められているため当然ですが、特にハローワークで募集を行う場合、年齢制限は厳しくチェックされます。
でも、全ての年齢・性別の方に募集・求人するとなるとどうしても採用が難しくなるケースもあると思います。
そういう時は、年齢や性別ではなく業務内容で絞るという方法があります。
年齢不問、男女OKとした上で、業務の内容や、職務の遂行に必要な労働者の適性・能力、経験、技能などをできる限り具体的に明示することによって、求めるイメージの方に応募してもらえる可能性が高くなります。

 NGな表現 業務を詳しく書く
 古着屋の販売員として、30歳以下女性を募集 10歳代から20歳代前半までの女性向けの洋服の販売であり、宣伝を兼ねてその商品を着用して店舗に出る業務である 。
工場のライン担当者として、45歳以下男性を募集  工場に勤務し、重い荷物(〇〇㎏程度)を上げ下ろしするなど、継続していくためには持久力と筋力が必要となる業務である。 
 長距離バスの運転手として、50歳以下男性を募集 長距離バスを運転して、札幌から大阪までを定期的に往復し、戦車など高所に登ることもあり、継続していくためには、持久力と筋力が必要となる業務である。

ハローワークでどのような求人を行うのかをしっかり考え、求人申込書の業務内容を具体的にイメージできるものに仕上げていくことで、いい人材を確保していきましょう。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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