マネジメント

飲食店を開業する前に決めておくべきお店のコンセプト

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月27日

飲食店を開業するにあたって、繁盛店になるかどうかを左右する重要なポイントがお店のコンセプトです。
お店のコンセプトとは、一言でいうと「どのようなお店」かということです。
お店のコンセプトが固まらないと、開業に向けた準備が進まないばかりか、オープンしてもお店の強みが発揮できず、お店の存続に関わってしまうことになりかねません。
今回は、お店のコンセプトがなぜ重要で、どのようなことを決めていかないといけないか、について解説してみたいと思います。

お店の基本コンセプト

お店のコンセプトは大きく分けて2つあります。基本コンセプトと詳細コンセプトです。
まずは、基本コンセプトから解説します。

基本コンセプトとは、お店のスタイルを一言で表現するとどういうものかというものです。具体的には

  • ログハウスの自然の温かみを感じられるダイニングレストラン
  • 新鮮な地元の野菜を低価格で提供する健康志向の居酒屋
  • 昭和レトロな雰囲気の中で懐かしのソウルフードを提供する定食屋

個人が小規模で飲食店を開業するなら、このようなコンセプトをしっかりと設定し、そのコンセプトに合った立地・内外装・メニュー・接客などを徹底することが非常に重要なポイントとなります。この基本コンセプトがしっかり固まっていないと、事業計画が立てられず、当然創業融資の調達もうまくいかないことが多く、いつまで経っても出店できないことになってしまいます。
また、出店できたとしても、基本コンセプトがあいまいだと、お店のスタイルがブレブレになります。
内外装とインテリアがあっていない。メニューに一貫性がなく、売りがない。スタッフの接客スタイルも確立できない。などなど、お店のスタイルが固まらず迷走してしまうことになります。
したがって、まず飲食店を開業する時には、自分がどのようなお店を作りたいのかをしっかり考えたうえで、それを一言で説明できる「文字」で表現した基本コンセプトが非常に重要になります。

お店の詳細コンセプト

基本コンセプトが決まれば、次は詳細なコンセプトです。
詳細なコンセプトは、基本コンセプトを実現させていくために決めるべき具体的なコンセプトです。主なものは次のとおりです。

  • ターゲット
  • メニュー
  • お店
  • 接客

他にも決めるべき詳細なコンセプトはありますが、以下ではこの4つに絞って解説していきます。

ターゲット

まずは、どのようなお客様に来て頂きたいかというターゲットの設定です。
会社帰りのサラリーマンなのか、子供のいるファミリーなのか、セレブなご婦人なのか、など、お店のメインとなる顧客層をしっかりと設定することです。
ポイントは、

  • 性別
  • 年齢層
  • 職業・収入
  • 家族構成
  • 来店方法(徒歩・車)

あたりを検討事項としながら、お店のメインとなるお客様をイメージしていきます。
ターゲット層が違えば、客単価や提供するメニュー、出店する場所、営業時間など、さまざまなポイントが変わってきます。したがって、ターゲットをどう設定するかは非常に重要なポイントとなります。
基本コンセプトにあったターゲットがどのような層なのかをしっかりと考えていきましょう。

メニュー

どのような料理やドリンクを提供するかというメニューの基本方針を決めることも重要なポイントとなります。
20代の男性サラリーマンと、30代の健康志向が高い女性では、喜ばれるメニューが違ってくると思われます。また、例えば基本コンセプトが、「新鮮な海産物を提供する海鮮居酒屋」としているのに、メニューに肉料理が充実しているのも違和感をもたれてしまいます。
そしてメニューを決める時の重要な要素として、「料金」があります。
料金も基本コンセプトやターゲット、お店の雰囲気など他の詳細なコンセプトと強く結びついていて、微妙なかじ取りが求められる要素となります。何よりも、お店の利益を左右する重要なポイントになります。
その他、どこから材料を仕入れるかという仕入ルートの論点や、どのくらいの腕をもった料理人が必要かといった人材の論点にもつながるという幅広い影響力を持つのがメニューのコンセプトです。
メニューの入れ替えなどは問題ないですが、コンセプトから外れた料理やドリンクの提供はお客様が離れていく一つの要因にもなりますので、メニューのコンセプトはしっかりと検討しておきましょう。

お店

開店したら、実際にお客様にお食事を提供する場であるお店をどのようにするかも重要なコンセプトです。
内装・外装、家具、食器、厨房機器、トイレなど、基本コンセプトに合わせてこだわるべきポイントはたくさんあります。
基本コンセプトが落ち着いた雰囲気なのであれば、照明は落とし気味で内装や家具も落ち着いたトーンにすべきですし、基本コンセプトがポップで明るい雰囲気とするならば、明るい色のインテリアを選択したほうがいいというように、常に基本コンセプトにあっているかどうかがポイントとなります。
お店の詳細なコンセプトが決まらないと、内装や外装の工事を発注できないですし、家具もどのようなテイストのものを選べばよいかが見えてきません。ここで、お店のコンセプトを十分に考えずに内外装工事を進めたり、家具を購入したりすると、どこか違和感のあるお店ができてしまうことがあります。内外装工事にしても、家具にしても高価なものなので、簡単にはやり直しがききません。
したがって、開店準備をイメージ通りに進めるためにも、まずはお店のコンセプトを固めることが重要となります。

接客

お客様が来店されたときに接点を直接持つのはスタッフです。したがって、スタッフの接客がお店の評判を左右する大きなポイントとなります。
お店の接客も、こうすればよいという定石はありません。接客についても、基本コンセプトから導かれるターゲットやメニュー、お店の雰囲気などに大きく影響を受けます。
例えば、会社帰りのサラリーマンがメインターゲットの居酒屋であれば、元気をウリにした接客が好まれますし、休日の家族連れがメインターゲットのレストランであれば、小さな子供への気配りが喜ばれたりします。
また、将来的にスタッフが増えていったり、店舗を増やしていくことを念頭に置くのであれば、接客マニュアルの整備が欠かせません。
来店時の接客や電話対応、オーダーの取り方やクレーム対応など、どのスタッフでも同じような対応が求められるため、接客マニュアルに落とし込んで、標準化する必要があります。この接客マニュアルを作る場合にも、接客のコンセプトが重要になります。

コンセプトを固めることがお店作りの第一歩

このように、お店の基本コンセプトを固めつつ、ターゲット、メニュー、お店の雰囲気、接客などの具体的なコンセプトを設定していくことが、お店作りの第一歩となります。
コンセプトは、家でいう基礎・土台にあたる部分であり、お店を繁盛させるために必要な重要ポイントとなります。
ここがあいまいなまま進んでいくと、メニューがぶれたり、お店の雰囲気がぶれたりしていき、お客様から「このお店は何のお店なんだ?」という疑問を持たせることになって、お店の強みがどんどん消えていってしまいます。
強いお店を作るためにも、お店のコンセプトをしっかりと考えてみてください。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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