業務効率化

MFクラウド会計を導入しても経理業務の時間は変わらない?

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

  • facebook
  • twitter
  • はてなブックマーク
  • URL貼り付け

本記事は8分で読むことができます

更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月25日

MFクラウド会計がうたっているのは、「経理業務にかける時間が劇的に改善する」というものです。
しかし、現実的にはMFクラウド会計を導入して、いきなり経理業務の時間が減ることはありません。
「クラウド会計導入しただけで経理業務がすぐに楽になる」というのは、よくある誤解です。
MFクラウド会計を導入しても、今までと同じように仕訳を一つ一つ入力しようとする方ががいらっしゃいます、これでは意味がありません。
今回は、MFクラウド会計を活用して経理業務の時間を短縮するためのポイントをお伝えします。

ネットバンキングを導入する

MFクラウド会計の代表的な機能として、預金口座を会計ソフトと連携し、入出金明細から自動で仕訳が計上される機能があります。
これ自体はMFクラウド会計の非常に便利な機能ですが、この機能を使うためには、そもそも銀行口座でネットバンキングを使える状態にしておく必要があります。
そもそもネットバンキングさえも設定していない銀行口座が多ければ、この機能はあまり意味がありません。
MFクラウド会計は、2017年3月時点において、全3,613口座・サービスと連携しています。これは国内の金融機関をほぼ網羅したものとなっています。
この連携サービスを使いこなすためには、インターネットバンキングがマストとなりますので、まずはインターネットバンキングを導入するところから始めましょう。

自動仕訳を最大限活用する

これまでの弥生会計などの会計ソフトは、基本的に仕訳を1本ずつ入力していくことが前提でした。したがって、経理処理といえば、仕訳を入力するものというお考えをお持ちの方も多いのではないかと思います。
しかし、この考え方をMFクラウド会計に持ち込んでしまうと、経理業務が効率的にならないばかりか、かえって手間がかかってしまうことすらあります。
MFクラウド会計を使用するときは、「仕訳を一つ一つ入力する」という発想を完全に捨て去って、自動仕訳で処理していくような経理が重要となります。
毎月繰り返し発生するような取引は全部MFクラウド会計に覚えさせていけば、経理の時間を大きく削減することができます。

毎月発生する取引をインターネットバンキング口座に集める

MFクラウド会計で自動仕訳を利用できるのは、基本的にデータ連携できるものに限られます。
したがって、毎月継続して発生するような取引に自動仕訳を利用して経理処理していくのであれば、これらの取引はインターネットバンキング口座に集める必要があります。
MFクラウド会計と連携したインターネットバンキング口座を通せば、毎月MFクラウド会計に口座連携によってデータを取り込むだけで過去に登録していた自動仕訳が呼び出されます
今回初めての取引であったとしても、仕訳を登録しておくと、来月以降は自動仕訳が呼び出されてくるようになります。

経理業務フローを変える

MFクラウド会計を使いこなすためには、経理業務のフローを変えていく必要がある場合もあります。例えば、次のようなケースです。

これまでインターネットバンキングを利用していなかった場合

今まで銀行の窓口やATMで振り込みしていた業務フローを、インターネットバンキングでの振り込み手続きに変更することになりますが、このフローを変えるには、「ネットバンキングのID・パスワードは誰が知っておくのか」「それはどのように管理するのか」「入出金照会用のパスワードと振込実行用のパスワードの権限設定」など、会社として支払・口座管理ルールを決めていく必要があります。
また、銀行口座が複数あるような場合には、口座の集約も含めて銀行口座の見直しもすべきでしょう。
何となく前から持っている、一部の売上先からの入金口座として維持している、という口座であれば、その口座を他の口座で代替できないか検討しましょう。意外に多くの会社で使っていない口座は存在しています。

現金出納帳を手書きで行なっている場合

手書きの現金出納帳をMFクラウド会計で仕訳を一つ一つ手入力していくというのはナンセンスです。
MFクラウド会計は仕訳を入力するごとにインターネットと通信を行うため、このやり方だと従前の会計ソフトよりもかえって時間がかかってしまいます。
MFクラウド会計を最大限活用するためには、手書きではなく、エクセルの現金出納帳を作成します。
このエクセルの現金出納帳をMFクラウド会計にアップロードすることで自動的に仕訳が生成されます。
ここで変えるべき業務フローは現金出納帳を手書きからエクセルに変更するということです。
【参考記事】手書きの現金出納帳は絶対にやめましょう

税理士に相談する

MFクラウド会計を使って、経理業務を楽にしたい方は税理士に相談してみましょう。
税理士は御社の経理処理をよく知っているはずです。
MFクラウド会計に変更して、もっと入力が楽にならないか、気軽に相談してみましょう。
もし、このような相談にのってくれないのであれば、それは税理士の怠慢です。
税理士からすると、お客さんが経理業務を楽にしたいという希望をお持ちであれば、当然相談に乗ってくれるはずです。
まずは気軽に相談してみましょう。

補足:経理業務を効率化したその先は?

MFクラウド会計を導入した結果、経理業務にかける時間が減るのは素晴らしいことです。
しかし、それだけではMFクラウド会計を使用する意味はありません。
MFクラウド会計は経理業務にかける時間を短縮し、その結果として「試算表の完成スピードを速める」ことに本当の意味があります。
経理の本来の目的とは「業績をできるだけ早く把握し、経営者が次の一手を打つための情報を提供すること」です。
例えば、7月分の業績(試算表)が8月末に完成していたのが、MFクラウド会計を導入して8月10日に完成することになったのであれば、MFクラウド会計を導入する意味があったといえます。
経理時間が減って満足しているだけでは、あまり意味がありません。
「業績をできるだけ早く把握する」という点において、MFクラウド会計は効果を発揮します。
そのために、「MFクラウド会計の導入」と「業務フローのそもそもの見直し」は重要な両輪であるわけです。
MFクラウド会計導入の最終目的は、実は業績把握の早期化にあるという点を見逃さないようにしてください。

小さな会社が数字を読んだ経営に変わる便利なツールをご紹介

小さな会社のお金の問題

小さな会社でも事業が成長したり、売上が増えてくると必ず頭を悩ませるのが、お金の問題です。
特に、何か新しいことをするときの経費や、従業員に関するお金はシビアな問題がつきものです。
例えば、スタッフを採用するのであれば、

  • 給料はいくらにすればいい?
  • 頑張っているから昇給してあげたい・・・
  • 賞与はどれくらい出すべき?

というように、お金のことで悩みは尽きません。
だからと言って、スタッフを採用しなかったり、新しいことをしないとなると、事業は成長しませんし、何より仕事が回らなくなってしまいます。
ここで重要になるのが、しっかりお金(数字)を意識しながら、経営をシミュレーションすることです。
数字を読みながら、経費や給与などをかけるコストを決めていくことによって、お金で失敗するリスクを大きく下げることができます。

簡単に経営をシミュレーションできるツールを使う

一般的に経営をシミュレーションしようとすると、会計ソフトから会計データをエクセルなどの表計算ソフトにエクスポートし、数字を動かしていくことでお金をきっちり残しながら、お金の使い方を考えることになります。エクセルは非常に便利なツールで、会計データがあれば、基本的なお金の動きの分析はできますし、編集などもできますが、いくつか難点があります。
まず1点目ですが、お金の動きを分析をするためには、ある程度の会計の知識が必要になることです。特に、管理会計の知識がないと、売上を増やしたら、コストがどのように動いて、利益がどう変わるかといったあたりの関係がよくわからなくなって、手を焼くことになるかもしれません。
次に、エクセルは非常に優れたツールでゼロベースでいろいろなことができるのですが、裏を返せば、ゼロから作らないといけないので、結構大変な作業になってしまいがちです。私たちも以前はエクセルで経営シミュレーションのサポートをしていましたが、私たちプロがやっても、1社あたり毎月1〜2時間はエクセルの作業時間を費やしていました。
このように、経営のシミュレーションをエクセルでしようとするといくつかのハードルがあって、せっかく経営にとって非常に有効な手法である経営分析が広まらない一つの要因でもありました。
そこで、ご紹介したいのは、簡単に経営の数字を把握できるクラウドツールManageboardです。
このクラウドツールを使えば、会計ソフトからデータを連携すると5分で、会計の専門知識がなくても簡単に経営をシミュレーションすることができます。
無料で利用することもできますので、経営をシミュレーションしながら、数字を読んだ経営をしたいという方は、一度試してみてください。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

  • facebook
  • twitter
  • はてなブックマーク
  • URL貼り付け

おすすめの記事