マネジメント

スタートアップが開業費をうまく使って経理で得する方法(個人事業主・法人)

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月26日

スタートアップ企業が経理で最初に悩むのが開業費の処理です。開業費はうまく経理することによってメリットを得ることができるものですが、うまい使い方があまり知られていないのも事実です。
今回は、MFクラウド会計を使っているスタートアップが開業費をもっとうまく経理していくためのポイントを解説していきます。

スタートアップが開業費をうまく使いこなすべき理由

開業費とは、会社を設立してから、または個人事業の準備を開始してから実際に開業するまでの間にかかった費用をいいます。
開業費とすれば、かかった費用を資産計上して繰り越して、経理上の経費処理を任意償できます。
これ、どういうことかお分かりでしょうか?
好きな時に費用処理できるということです。
青色申告の繰越欠損金などを使えば赤字を繰り越すことはできます。しかし、繰越欠損金は繰り越せる期間に限度があるなど制約はありますが、開業費とすればいつでも自由に費用処理できるため、開業してから数年間利益が出ないかもしれないなど、事業の立ち上がりが遅くなりそうな場合には有利な経理処理となります。
このように、開業までにかかった費用で、可能なものは開業費としておくことが初年度の経理処理のポイントとなります。

開業費の範囲

法人の場合

開業準備〜会社を設立するまでの支払

開業するまでの間に会社(法人)を設立する場合の開業準備費用ですが、基本的に会社を設立するまでにかかった以下の費用は創業費という勘定科目で処理します。

  • 定款作成費用
  • 登記費用
  • 司法書士費用
  • 税理士費用

会社設立後〜開業までの支払

次に、会社を設立してから開業までかかった費用は開業費とします。
ただし、全ての費用が開業費になるわけではありません。開業費となるのは、開業準備のために特別に支出する費とされています。
この開業準備のために特別に支出する費用が、開業費としていつでも費用処理できる対象となります。
具体的にみていきましょう。

チラシ・パンフレット

開業費OK
事業を開始するためには、会社案内や商品説明などのパンフレットや集客や開業案内のためのチラシが必要となります。
開業に向けて必要となるこれらのチラシやパンフレットなどのデザイン料や印刷費などは開業準備のための特別に支出する費用となります。

名刺

開業費OK
開業すれば、取引先や金融機関などたくさんの外部の人と会うことになります。その時に必要となるのが名刺です。
名刺の製作費用も開業のために特別に支出する費用となります。

交通費や旅費

開業費OK
開業の準備をするためには、いろいろと移動しないといけないことが多くなります。毎日、電車代やタクシー代がかかりますし、遠方への出張があれば、新幹線や飛行機に乗らなくてはいけなかったり、宿泊費が必要になったりします。
これらの開業のために必要となる交通費や旅費は開業準備のための特別に支出する費用となります。

市場調査のための費用

開業費OK
開業するにあたっては、様々な調査が必要になることがあります。自分で調査できることであれば時間さえかければなんとかなりますが、専門家やコンサルタントに調査を依頼しないといけないこともあります。
このような開業のために避けられない市場調査の費用は開業準備のための特別に支出する費用となります。

接待費や贈答費

開業費OK
開業するまでの準備期間でいろいろな人にあって食事をしたり、挨拶するための手土産が必要になったりします。
開業準備のために要した飲食代や贈答品などの接待費・贈答費は開業準備のための特別に支出する費用となります。

開業までの給料

開業費NG
開業するまでの間にアルバイトを採用するなどで給料の支払いが生じる場合があります。給料の支払いは、開業までの費用であったとしても、給料は定期的に発生するものなので、特別な支出にはなりません。
したがって、給料は開業費にはならず、発生した期の費用とします。

開業までの水道光熱費

開業費NG
開業するまでに構えた事務所や店舗の開業準備中には少なからず水道代、ガス代、電気代などの費用がかかってきます。このような水道光熱費も開業するまでにかかる費用となりますが、定期的にかかるものなので、特別な支出には該当しません。
したがって、水道光熱費は開業費にはならず、発生した期の費用とします。

開業までの家賃

開業費NG
開業までに事務所や店舗を賃借すると、家賃が発生します。この家賃も開業するためには必要となる費用ですが、こちらも給料や水道光熱費と同様に定期的に発生する費用なので、特別な支出には該当しません。
したがって、開業までの家賃も開業費にはならず、発生した期の費用とします。

開業までの支払利息

開業費NG
開業する前に、創業融資などを受けることがあると思います。創業融資を受けたら利息の支払いが開業までに発生することがありますが、この利息の支払いについても定期的に発生するものであり、特別な支出とは認められません。
したがって、開業までの利息の支払いも開業費にはならず、発生した期の費用とします。

個人事業の場合

上記の通り、会社で事業を新しく始めようとする場合は、開業前の費用の内容によって、開業費となるかどうかが変わってきます。
では、個人事業の場合はどうなるのでしょうか。
結論から申しますと、上記のような開業のために必要となった開業のための支払は、全て開業費と処理して問題ありません。
改めて記載しますと、個人事業の場合、以下のような支出で開業準備のために要したものは開業費として処理できます。

開業費OK

  • チラシ・パンフレット
  • 名刺
  • 旅費・交通費
  • 市場調査のための費用
  • 接待費や贈答費
  • 従業員の給料
  • 水道光熱費
  • 支払利息

開業費の経理処理

では、開業費の経理処理を具体的にMFクラウド会計の画面を見ながら解説します。
まずは、MFクラウド会計のホーム画面から「手動で仕訳」>「振替伝票入力」を選択し、クリックします。
MFクラウド会計の「振替伝票入力」を選択し、クリック
すると、MFクラウド会計の振替伝票入力画面に移りますので、この画面で仕訳入力をしていきます。
MFクラウド会計の振替伝票入力画面で仕訳入力
まず、借方の勘定科目には「開業費」を選択します。補助科目は特に設定しなくても問題ありません。
次に、金額を入力します。この金額は請求書や領収書などから入力すればOKです。日付は、基本的には請求書や領収書の日付を入力します。もし、会計期間の前の日付などで入力できない場合は、会計期間の開始日を入力します。
貸方に移ります。貸方ではまず勘定科目として、開業費となるものを支払った勘定科目を選択します。普通預金であれば、補助科目として銀行名と口座番号を選択しておきます。
次に摘要欄に、開業費とする支払いの内容がわかるように記載しておきます。
最後に、「登録」ボタンをクリックして、MFクラウド会計に開業費の仕訳が登録できました。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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