更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月25日
減価償却の基本
減価償却とは
数年にわたって使用する設備や建物の内外装、機器などは購入した時に経費として経理処理することができません。
それでは、どうするかというかというと耐用年数にわたり、一定のルールに従って分けて費用処理していきます。
この経理上の処理を減価償却といいます。
減価償却はちょっとした計算をしないといけないため、しっかり理解するためには簿記の知識が必要となります。
しかし、固定資産台帳をうまく使えば、減価償却を簡単にすることができます。
固定資産台帳で減価償却を簡単に計算する
経理実務において、減価償却をするためには固定資産台帳があるとすごく便利です。
減価償却はエクセルでも計算できますが、固定資産台帳があれば必要な情報を登録しておけば減価償却の細かいルールを知らなくても自動で計算してくれて、しかも一覧表で管理までできるという非常に便利なツールです。
とはいっても、馴染みのない固定資産台帳がうまく使えるかよくわからないと思われる方がいらっしゃると思います。
そこで、MFクラウド会計では固定資産台帳が標準機能として使えるようになっていますので、このMFクラウド会計の固定資産台帳を使いながら、減価償却の考え方や実際の固定資産台帳の使い方を一緒にやってみましょう。
MFクラウド会計の固定資産台帳の登録方法
それでは、MFクラウド会計の固定資産台帳の使い方を解説していきます。
まず、MFクラウド会計のホーム画面のサイドバーから「決算・申告」>「固定資産台帳」を選択し、クリックします。
そうすると、固定資産台帳の画面に移ります。
減価償却するために固定資産台帳に登録したい場合は、この画面の「固定資産の追加」をクリックします。
すると、固定資産の追加画面が開きますので、ここで登録したい固定資産の具体的な情報を登録していきます。
以下で順番に見ていきましょう。
勘定科目
まずは、MFクラウド会計に登録したい減価償却の対象となる資産(以下、「減価償却資産」といいます)の勘定科目を選択します。
MFクラウド会計の初期登録で設定した勘定科目から減価償却資産を選択してください。
なお、MFクラウド会計の勘定科目の選択については、以下の記事が参考になります。
参考記事:MFクラウド会計の勘定科目の設定と使い方テクニック(貸借対照表−固定資産)
資産の名前
資産の名前には、減価償却の対象となる資産(以下、「減価償却資産」といいます)の名称を登録します。
特に決まったルールはありませんが、資産の名前を見れば、どのような内容かがわかるように具体的な情報をMFクラウド会計の固定資産台帳に登録しておくと、管理しやすくなるのでオススメです。例えば、以下のような情報です。
- 営業車両・・・メーカー・社名・ナンバープレート
- パソコン・・・メーカー・製品名
- 製造装置・・・メーカー・製品名・型式番号
取得価格
取得価格とは、減価償却資産を手に入れるためにかかった支払額です。MFクラウド会計の固定資産台帳には、以下で計算した取得価格を円単位で登録するようにしましょう
購入価格とは、減価償却資産自体の値段に、運賃や購入手数料などを加えた金額です。
取得に直接要した支出額とは、設置費用や試運転などが必要な場合の費用です。
これらの合計額が取得価格となります。請求書などでチェックしながら取得価格を登録しましょう。
数量または面積
MFクラウド会計の固定資産台帳の数量または面積には、対象となる減価償却資産の台数や面積を登録します。これを登録することでMFクラウド会計によって作られる固定資産台帳に数量や面積が印字されるようになります。
取得日
MFクラウド会計の固定資産台帳の取得日には、対象となる減価償却資産を購入した日、取得した日を登録しましょう(使用し始めた日ではありませんのでご注意を)。
耐用年数
耐用年数とは、減価償却資産の使用可能年数であり、実務的には、税法で定められた耐用年数表に定められた年数を使用します。会計事務所も国税庁の耐用年数表などを見ながら、耐用年数を登録しています。
国税庁の耐用年数表
なお、中古車や中古の設備を購入した場合には、別途耐用年数の計算方法がありますので、ご留意ください。
償却方法
減価償却費の計算方法は、資産の種類や優遇税制の有無によっていくつかのパターンに分けられています。
MFクラウド会計の「固定資産台帳」機能では、償却方法さえ選べば、減価償却費は自動計算してくれます。 MFクラウド会計で選択できる償却方法は以下のようになっており、それぞれ対象となる減価償却資産に応じて、償却方法を選択してください(以下の表は原則的な減価償却の方法となっていますので、減価償却の償却方法の届出書の提出等によって別の償却方法を選択する場合は、別途ご検討ください)。
また、減価償却方法は、法人と個人事業で異なる部分があるため、ご留意ください。
減価償却の方法(法人)
減価償却方法 | 概要 | 解説 | 対象となる勘定科目 |
---|---|---|---|
償却なし | 減価償却費を計上しない方法 | 減価償却費を計上しないこともできます。減価償却をストップする時に選択しますが、利益調整にもなりますので、銀行などの金融機関からはよく見られないため、オススメしません。 | 全ての減価償却資産 |
即時償却 | 購入初年度に全額を償却できる方法 | 税務上で優遇税制などの制度を利用する場合、購入時に全額を償却できる節税効果の高い方法です。 | 優遇税制の対象となる減価償却資産 |
一括償却 | 3年間にわたって、均等額を償却する方法 | 取得価額が10万円以上、20万円未満の減価償却資産(一括償却資産)に適用される方法です。 | 一括償却資産 |
定額法 | 毎期、均等額の減価償却費を計上する方法 |
建物について適用される減価償却方法です。また、平成28年4月1日以後に取得をする建物付属設備や構築物も定額法となります。 ソフトウェアなどの無形固定資産についても、定額法での減価償却となります。 |
建物・建物附属設備・構築物・無形固定資産 |
定率法 | 毎期、期首簿価に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法 | 定額法の対象となる減価償却資産以外の減価償却資産に適用される減価償却方法です。一番メジャーな減価償却方法と言えます。 | 建物・建物附属設備・構築物以外の減価償却資産 |
旧定額法 | 平成19年3月31日以前に使われていた定額法 | 平成19年3月31日以前に取得した定額法の対象となる減価償却資産に適用されます。上記の定額法とは、耐用年数後に残る価値(残存価格)が設定されている点で異なります。 | 平成19年3月31日以前に取得した建物 |
旧定率法 | 平成19年3月31日以前に使われていた定率法 | 平成19年3月31日以前に取得した定率法の対象となる減価償却資産に適用されます。残存価格が設定されていたり設定されている償却率などが異なります。 | 平成19年3月31日以前に取得した建物以外の減価償却資産 |
任意償却 | 耐用年数や償却方法を定めず自由に償却額を決定する方法 | 創業費や開業費など、税法上で認められた資産についてのみ任意償却が選択できます。 | 創業費・開業費 |
減価償却の方法(個人事業)
減価償却方法 | 概要 | 解説 | 対象となる勘定科目 |
---|---|---|---|
償却なし | 減価償却費を計上しない方法 | 減価償却費を計上しないこともできます。減価償却をストップする時に選択しますが、利益調整にもなりますので、銀行などの金融機関からはよく見られないため、オススメしません。 | 全ての減価償却資産 |
即時償却 | 購入初年度に全額を償却できる方法 | 税務上で優遇税制などの制度を利用する場合、購入時に全額を償却できる節税効果の高い方法です。 | 優遇税制の対象となる減価償却資産 |
一括償却 | 3年間にわたって、均等額を償却する方法 | 取得価額が10万円以上、20万円未満の減価償却資産(一括償却資産)に適用される方法です。 | 一括償却資産 |
定額法 | 毎期、均等額の減価償却費を計上する方法 |
建物・建物附属設備・機械装置・車両・工具器具備品などの減価償却資産について適用される減価償却方法です。 ソフトウェアなどの無形固定資産についても、定額法での減価償却となります。 |
建物・建物附属設備・機械装置・車両・工具器具備品などの減価償却資産・無形固定資産 |
定率法 | 毎期、期首簿価に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法 | 機械装置・車両・工具器具備品などにつき、「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出すれば、適用される減価償却方法です。 | 「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を提出した対象資産 |
旧定額法 | 平成19年3月31日以前に使われていた定額法 | 平成19年3月31日以前に取得した定額法の対象となる減価償却資産に適用されます。上記の定額法とは、耐用年数後に残る価値(残存価格)が設定されている点で異なります。 | 平成19年3月31日以前に取得した建物 |
旧定率法 | 平成19年3月31日以前に使われていた定率法 | 平成19年3月31日以前に取得した定率法の対象となる減価償却資産に適用されます。残存価格が設定されていたり設定されている償却率などが異なります。 | 平成19年3月31日以前に取得した建物以外の減価償却資産 |
任意償却 | 耐用年数や償却方法を定めず自由に償却額を決定する方法 | 創業費や開業費など、税法上で認められた資産についてのみ任意償却が選択できます。 | 創業費・開業費 |
事業供用開始日
事業供用開始日とは、実際に事業に使用し始めた日です。
対象となる減価償却資産が本来の目的のために使用を始めた日として、具体的には、製造設備であれば、機械を工場に搬入した日ではなく、据え付け・試運転が終わり実際に製造が始まった日が事業供用開始日となります。
今期償却額
最後に今期の償却額を登録します。
ここまで解説してきた項目を順番に登録していくと、以下のようにMFクラウド会計が減価償却費の自動計算による参考値を表示してくれます。
基本的には、上記で登録した情報に誤りがないことをチェックした上で、ここに表示された金額を今期償却額に登録するようにしましょう。
減価償却の具体例
最後に減価償却費の計算例を紹介します。
以下は、3月決算の会社で営業車両を購入した場合の減価償却費の計算例です。MFクラウド会計の固定資産台帳に減価償却資産の情報を登録すれば、以下のような計算を自動でしてくれていますので、参考にしてください。
購入時
11月1日に営業車両を200万円で購入しました。
取得価額は購入額の200万円です。
耐用年数は、以下の耐用年数表の「一般用のもの(特殊自動車・次の運送事業用等以外ののもの)」>「自動車(2輪・3輪自動車を除く。)」>「その他のもの」で調べると、6年となっています。
また、営業車両の償却方法は定率法です。なお、6年の定率法の償却率はMFクラウド会計が自動計算してくれます(0.333となります)。
- 取得価額:200万円
- 耐用年数:6年(償却率は0.333)
- 償却方法:定率法
初年度の決算時
決算時(3月31日)に、減価償却費を計上します。取得したのが11月なので、5ヶ月分だけ(5ヶ月/12ヶ月)減価償却費を計算します。
期末簿価=取得原価200万円-減価償却費27万7千円=172万3千円
次年度の決算時
決算時(3月31日)に、減価償却費を計上します。
期末簿価=期首簿価172万3千円-減価償却費57万4千円=114万9千円
MFクラウド会計の固定資産台帳が作れるようになる
これで、MFクラウド会計の固定資産台帳が作れるようになりました。
いかがでしたでしょうか?慣れていないとなかなかうまく設定や登録ができないものもあったかもしれません。しかし、固定資産の管理はMFクラウド会計を使いこなしていくためには欠かせない設定となりますので、時間をかけてでもきっちりやっておきましょう。
もし、不安がある方は、当社においてスモールビジネス向けにMFクラウド会計の無料設定サポートを提供していますので、もしMFクラウド会計の設定や使い方、操作方法などでよくわからないことがあれば、一度こちらもご覧ください。