マネジメント

ハローワークで正社員の採用を失敗しないための7つのステップ

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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本記事は12分で読むことができます

更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月26日

従業員を採用する時は、募集から始まり、面接や入社手続きなどたくさんのやるべきことがあります。
いい人を採用し、気持ちよく仕事をしてもらうためには、採用から入社手続きまできっちりやっていかないといけません。
今回は、初めてハローワークを利用して正社員を採用する時の基本的な流れを解説します。

Step1 ハローワークに事業所登録シートを作成する

ハローワークを使って正社員を採用するためには、まずハローワークに事業所を登録します。
事業所を登録するためには、会社もしくは事業所の住所を管轄するハローワークを調べて、必要な書類を取りに行きます。
管轄のハローワークはこちらから調べてください。
全国のハローワークの所在地
ハローワークでは、次の用紙をもらってきます。

そして、まずは「事業所登録シート」「事業所地図登録シート」から作っていきます。
このシートは、ハローワークで求人する事業所として登録するためのシートで、この事業所登録をすることによって、ハローワークで正社員やパート、アルバイトの求人を出すことができるようになります。
一見すると、会社や事業の概要を記載するだけなので、簡単に済ますこともできそうなんですが、実は、事業所登録シートのポイントをおさえてきっちり仕上げていくことが、求人を出した時にいい人材が採用できるかどうかの分かれ目となるくらい重要なシートになります。
以下の記事に、ハローワークでいい人材を採用するための事業所登録シートの書き方をまとめていますので、事業所登録シートを記載する時は参考にしてください。
参考記事:ハローワークで欲しい人材を集める事業所登録シートの書き方

Step2 ハローワークの求人申込書を作成する

次に、ハローワークの求人申込書を書いていきます。
このシートは、募集する仕事の内容や勤務体系、賃金など、求職者がハローワークでみる求人票のベースとなる求人情報を書いていくものです。
いい人材に応募してもらうためには、魅力的な求人票に仕上げていく必要があり、この求人申込書を徹底的にこだわって書き上げていかないといけません。この求人申込書の作成に力を入れるか入れないかで、集まってくる人材が大きく変わってくるくらい重要なシートになりますので、しっかり考えて作っていきましょう。
なお、次の記事はいい人材を集めるためのハローワークの求人申込書の書き方を解説したものとなりますので、求人申込書を作成する際には参考にしてみてください。
参考記事:ハローワークで欲しい人材を集める求人申込書の書き方(正社員-前編)
参考記事:ハローワークで欲しい人材を集める求人申込書の書き方(正社員-後編)

Step3 ハローワークに事業所登録シートと求人申込書を提出する

ハローワークの事業所登録シートと求人申込書を書いたら、所轄のハローワークに持って行って、ハローワークの担当者にチェックしてもらいます。
この際に記入時にわからなかったこととか、悩んだことを相談するといろいろなアドバイスをもらえます。
チェックが終わり登録が完了すれば、「事業所確認表」と「求人票」がもらえます。
ここまでできたら、後は求職者からの応募を待つことになります。なお、受理された求人情報の有効期限は、原則として受理された日の翌々月の末日までです。

Step4 求職者からの応募を待つ

求職者があなたの求人をみて、応募してきます。
応募の形は、ハローワークから応募者本人に紹介状が渡されるというハローワークからの紹介が一般的ですが、ハローワークインターネットサービスや、地方自治体・民間職業紹介事業者への開示を承諾した場合は、求職者がインターネットや書く求人媒体からあなたの求人情報を見ることができるようになるため、応募者本人から直接電話での応募なども出てくることがあります。
うまくいけば、1週間の間に数十件の申し込みがくることもありますので、採用基準などを事前に用意しておきながら電話対応していく必要があります。

Step5 選考する

ハローワークの求人申込書には、選考の欄があり、ここに選考方法や応募書類、選考日程や通知方法など、選考に関して事前に登録することとなっています。
この登録した方法によって、応募書類を入手したり、書類選考や面接などを進めていきます。
慣れていないと、事前に登録した方法と違う形での選考をしてしまいがちですが、トラブルのもとになりますので、求人申込書に記載した選考方法のとおり進めるようにしてください。
特に選考結果の通知は、もれなく期間内に通知しましょう。また、結果はハローワークに対しても紹介状の裏面の「選考結果通知」によってFAXで連絡する必要があります。

Step6 入社手続きを行う

採用が決まって入社となれば、いろいろな手続きを進めていく必要があります。

雇用契約書

まず、重要な手続きが、雇用契約書の締結です。
労働条件を書類で明示しなければいけない旨が労働基準法で定められています。具体的には次の項目が書類で明示することが求められます。

  • 労働契約の期間
  • 就業の場所、従事する業務の内容
  • 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

これらの項目を網羅した労働条件通知書を作成するか、雇用契約書として契約するのが一般的です。
ここで留意していただきたいのが、当たり前のことですが、ハローワークに提出した求人申込書の条件や面接時に提示した条件と同一の条件を提示することです。
なお、雇用契約書については、次の記事にポイントをまとめていますので、参考にしてください。
参考記事:スモールビジネスのための雇用契約書の雛形と作成上のポイント

誓約書

誓約書は、新たに入社する従業員に、会社のルールを意識してもらうとともに、社員としての義務を確認するための重要な書類になります。
入社する従業員に守って欲しい項目を記載した上で、誓約書をかわしておくことで、不測の事態から会社を守ることができます。
次の記事は、入社誓約書についてポイントをまとめたものになりますので、誓約書を作成する際の参考にしてください。
参考記事:【入社手続き】会社と従業員を守る入社誓約書テンプレートと書き方

健康診断

労働安全衛生法において、正社員を採用する場合には入社時の健康診断を受診することが事業主に義務付けられています
入社時の健康診断として、入社前後に受診する必要がありますが、入社前3ヶ月以内に受けた健康診断の結果を証明する書類があれば、代替することも可能です。
入社時の健康診断についても、次の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
 参考記事:【入社手続き】法律で決められてる採用時の健康診断の基本

Step7 社会保険・労働保険の手続きを行う

正社員として入社することで、社会保険労働保険の手続きもいろいろとしなくてはなりません。
ここでは、初めて社員を採用して、初めて社会保険と労働保険に加入する前提で解説します。

社会保険

社会保険には、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3種類があります。
まず、社会保険への加入手続きから解説します。社会保険は、会社であれば従業員がいない社長1人でも加入義務があります。個人事業であれば常時5人以上の従業員を雇うと加入する義務が発生します。
初めて加入する時には、「健康保険・厚生年金保険の新規適用届」を年金事務所に提出します。
詳しくは、次の記事で健康保険・厚生年金保険の新規適用届の書き方を解説していますので、こちらを参考にしてください。
参考記事:【図解】厚生年金保険・健康保険の新規適用届の書き方
次に、正社員が入社した時の社会保険手続きです。正社員として入社したら5日以内に社会保険の加入手続きを行う必要があります。
具体的には新たに入社する正社員の「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を作成し、年金事務所に提出します。
詳しくは、次の記事で健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届の書き方を解説していますので、こちらを参考にしてください。
参考記事:【図解】厚生年金保険・健康保険の被保険者資格取得届の書き方
また、入社する正社員に扶養家族がいれば、扶養家族についても社会保険手続きが必要となります。具体的には入社した日の5日以内に「健康保険被扶養者(異動)届」を作成し、年金事務所に提出します。
詳しくは、次の記事で健康保険被扶養者(異動)届の書き方を解説していますので、こちらを参考にしてください。
参考記事:【図解】健康保険被扶養者(異動)届の記入例と書き方

労働保険

労働保険には、労災保険と雇用保険の2種類があります。
労災保険については、従業員が1人でもいれば加入しないといけません。雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上継続して雇用する見込みであれば加入義務があります。
まず、初めて労働保険に加入する際は、「労働保険 保険関係成立届」を作成し、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。また、雇用保険については、「雇用保険適用事務所設置届」を作成し、ハローワークに提出する必要があります。
詳しくは、次の記事で解説していますので、こちらを参考にしてください。
参考記事:【図解】雇用保険の適用事業所設置届の記入例と書き方
次に新たに加入する正社員についてですが、労災保険については、全ての従業員が保険の対象となるので、個別の加入手続きは不要です。したがって、雇用保険の手続きのみを行います。
雇用保険については、入社した月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を作成し、ハローワークに提出します。
こちらについては、次の記事で詳しく解説していますので、こちらを参考にしてください。
参考記事:【図解】雇用保険の被保険者資格取得届の記入例と書き方

これでハローワークでの求人手続きが完了しました

これで、ハローワークを利用した求人手続きが完了です。
いかがでしたでしょうか?ハローワークは使い方次第で、コストをかけずに素晴らしい人材を集めることができるとても便利な機関です。この記事をしっかり読んでいただいて、素晴らしいスタッフと出会ってください。

小さな会社が従業員を雇っても安心して経営するために欠かせないこと

ヒトにまつわるお金の問題

小さな会社でも事業が成長したり、売上が増えてくると必ず頭を悩ませるのが、お金の問題です。
特に、ヒトに関するお金はシビアな問題がつきものです。
例えば、スタッフを採用するのであれば、

  • 給料はいくらにすればいい?
  • 頑張っているから昇給してあげたい・・・
  • 賞与はどれくらい出すべき?

というように、ヒトに関するお金のことで悩みは尽きません。
また、ヒトに関するお金は、想像している以上に経営に大きなインパクトを与えます。
スタッフを採用すれば、給料だけでなく、社会保険や通勤手当、賞与などの人件費はもちろん、机やパソコンが必要であったり、水光熱費なども増えるため、気がついたら想定よりも多くのお金が出ていってしまっていることもよくあります。
だからと言って、スタッフを採用しないと、事業は成長しませんし、何より仕事が回らなくなってしまいます。
ここで重要になるのが、しっかりお金(数字)を意識しながら、経営をシミュレーションすることです。
数字を読みながら、スタッフの給与、昇給、賞与などを決めていくことによって、お金で失敗するリスクを大きく下げることができます。

経営が突然死しないためのお金の動きを読むことが重要

このように、事業が成長すればするほど、出て行くお金が増えてきます。
そうなると、お金の出入りをきっちり把握し、経営を先読みしていかないと、お金を増やしていくことができません。
ここで重要になるのが、しっかりお金(数字)を意識しながら、経営をシミュレーションすることです。
数字を読みながら、スタッフの給与、昇給、賞与などを決めていくことによって、お金で失敗するリスクを大きく下げることができます。
経営を先読みするシミュレーションをしながら、お金の動きを把握することが、安定した経営のためにとても重要なポイントとなります。一般的に経営をシミュレーションしようとすると、会計ソフトから会計データをエクセルなどの表計算ソフトにエクスポートし、数字を動かしていくことでお金をきっちり残しながら、お金の使い方を考えることになります。エクセルは非常に便利なツールで、会計データがあれば、基本的なお金の動きの分析はできますし、編集などもできますが、いくつか越えるべきハードルがあります。
まず1点目ですが、お金の動きを分析をするためには、ある程度の会計の知識が必要になることです。特に、管理会計の知識がないと、売上を増やしたら、コストがどのように動いて、利益がどう変わるかといったあたりの関係がよくわからなくなって、手を焼くことになるかもしれません。
次に、エクセルは非常に優れたツールでゼロベースでいろいろなことができるのですが、裏を返せば、ゼロから作らないといけないので、結構大変な作業になってしまいがちです。私たちも以前はエクセルで経営シミュレーションのサポートをしていましたが、私たちプロがやっても、1社あたり毎月1〜2時間はエクセルの作業時間を費やしていました。
ですので、経営シミュレーションをするためには、会計の知識とエクセルなどのスキルがあればよりベターですので、大変かもしれませんが、勉強しながら経営を先読みしてみてください。
ちなみに、簡単に経営のシミュレーションをするクラウドツールもあります。
このクラウドツールを使えば、会計ソフトからデータを連携すると5分で、会計の専門知識がなくても簡単に経営をシミュレーションすることができます。
無料で利用することもできますので、経営をシミュレーションしながら、数字を読んだ経営をしたいという方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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