予算

飲食店で儲けを出すために解決しておくべき原価率の3つの疑問

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月23日

飲食店の経営者にとって、原価率にどう向き合うかは大きなポイントになってます。
料理の味や店舗の雰囲気などは、味わったり、見たり、感じたりできる部分ですが、原価率は直接的に目に見えないため、どのように扱ったらよいかわからないという声をよく聞きます。
今回は、私たちが、飲食店経営者からよく聞かれる原価率に対する疑問を3つほど紹介しながら、解決策を解説したいと思います。

疑問① 原価率は何%が正解?


原価率とは、何かお分かりになりますか?
原価率は、料理を作るための材料の仕入や、ドリンクの仕入など、お客様に提供する商品の仕入価格と販売価格の比率をいいます。
具体的には、以下の算式で計算する指標となります。

原価率=仕入価格÷販売価格×100
これは、原価率が40%であれば、提供する料理のメニュー価格が1,000円であれば、使用する材料の仕入は全部で400円にするということになるというものです。
原価率は、儲かる飲食店にするために欠かせない重要な指標です。
飲食店の原価率は30%にすべき」ということをよく言われますが、これが本当に正解かどうかは、お店の形態や規模、コンセプトによって変わってきます。
原価率を下げれば下げる程、利益率はよくなっていきますが、原価率を下げると、いい素材が使えなかったり、料理のクオリティが下がって、売上が下がってしまい、全体としての利益が減ってしまうことになりかねません。
そのため、お店の原価率は、お店のコンセプトやお客様の客層、立地、お店の雰囲気などから次の算式を使って繰り返し試行錯誤を繰り返しながら、正解を探していくべきです。

儲け=客単価×座席数×回転数×(1-原価率)×営業日数-(人件費+家賃+経費)
簡単に決まるものではないですが、原価率は儲かる飲食店にするために欠かせないポイントですので、じっくり検討してください。
なお、こちらの記事が参考になりますので、ご覧ください。
儲かる飲食店が必ずやっている儲けの方程式の作り方

疑問② 原価率は単品で決める?


疑問①でも書きましたが、原価率は仕入価格÷販売価格で計算される指標ですが、これは、メニュー単品で考えるものでしょうか?
こちらの疑問については、正解でもあり、不正解でもあります。
まず、原価率は個々のメニュー別に設定していかないと管理ができなくなりますので、まずは、メニュー毎に販売価格に対してどのような材料をどれだけ使用するかを決めながら、個別メニュー毎の原価率を設定していきます。
例えば、以下のように個別メニュー毎に原価率を設定します。

  販売価格 仕入原価 原価率
 お刺身の盛り合わせ 1,200円 600円 50%
 唐揚げ 500円 100円 20%
フライドポテト 400円 50円 12.5%
 ビール 500円 200円 40%
ハイボール 400円 60円 15%

まずは、このように単品毎に原価率を設定した上で、次に全体の原価率を考えていきます。
例えば、疑問①でもありましたが、全体の原価率を例えば35%にしたいとします。
すると、上表では、お刺身の盛り合わせとビールが35%を超えています。
それでは、この2つの料金を上げなければならないのでしょうか?
答えは NOです。
この時に重要となるのが、「セールスミックス」という考え方です。
セールスミックスとは、単品だけで考えるのではなく、売上全体の構成比から原価率を計算する考え方です。
先ほどの例で、1組のお客様の注文が以下のように、お刺身の盛り合わせと唐揚げを1品、フライドポテトを2品、ビールとハイボールを5杯ずつだったとしたら、以下のような売上と仕入原価の構成になります。

  販売価格 原価率 販売数量 売上 仕入原価
お刺身の盛り合わせ 1,200円 50% 1 1,200円 600円
唐揚げ 500円 20% 1 500円 100円
フライドポテト 400円 12.5% 2 800円 100円
ビール 500円 40% 5 2,500円 1,000円
ハイボール 400円 15% 5 2,000円 300円
合計       7,000円 2,100円

1組のお客様で見た場合、売上が7,000円に対して、仕入原価が2,100円となり、原価率は全体で30%となりました。
このように、全体の目標原価率が30%であった場合、個別メニューを無理して30%に合わせにいくのではなく、セールスミックを考えながら、全体の原価率を30%に持っていくような戦略を考えていくべきです。

疑問③ メニュー毎の原価率はどうやって計算するの?


疑問②で開設したように、原価率は基本的にメニュー毎に設定していくべきです。
それでは、メニュー毎の原価率はどうやって計算したらいいの?という疑問があります。
これについては、メニュー毎のレシピと密接な関係があります。
飲食店をオープンしたばかりの時は、レシピ作りまで手が回らないということもあるかもしれませんが、スタッフが増えたり、メニューが増えたりするとメニュー毎のレシピを作っていかなければ安定した店舗経営ができなくなります。
そのレシピを作る時に、どの材料をいくら使用し調理するかという調理方法を書いていくことになると思いますが、その時に、材料毎の想定単価を一緒に記載しておきます。
例えば、米であれば0.2円/グラム、マヨネーズであれば、0.7円/グラムというように標準的な単価を設定しておいて、メニュー毎のレシピの材料使用量に合わせて、原価を計算していきます。
この時に重要なのは、使えなくて捨ててしまう部分も含めて実際に使用した量で計算することです。
使えなくて捨ててしまう部分や、調理の過程で蒸発したり、なくなったりする部分を、歩留まりと言いますが、歩留まりまで加味した原価を計算することが意外と重要です。
儲かる飲食店を作っていくためには、大雑把ではダメです。細かい無駄を除いて、きっちりと管理をしていかないと、利益は出ないようになっています。
はじめは面倒に感じるかもしれませんが、レシピを作り、原価を細かく管理することが、儲かる飲食店経営への第一歩ですので、きっちり作り上げていってください。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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