行動目標が明確になる売上計画の作り方

事業計画書を作っていく中で、最も重要なもののひとつが売上計画です。
売上計画が重要なのは、あなたも十分理解されていると思います。
そんな重要な売上計画ですが、事業計画書を作って実際に1年後、2年度に振り返ってみたら、実績が大きく下回っていた・・・
というようなこともよくありますよね。
なぜ、こうなるのか?こうならないためにはどうしたらいいか?というところを今回は書いてみたいと思います。

絵に描いた餅になる売上計画

当社では、中小企業の事業計画の作成をお手伝いすることがよくありますが、クライアント様が作成した事業計画の中で、このような売上計画をよく見ます。

売上高の過去3期の実績と将来5期の売上見込みが入力されています。
この売上計画を作った社長に
「どういう見込みで作成していますか?」
と聞いてみたところ、来年から××との取引の話があるし、最近○○の調子がいいから、売上計画は毎期5%増加で見てみたとのこと。 
よくある話ですが、これでは絵に描いた餅まっしぐらな売上計画です。
それでは、本当に役に立つ売上計画とはどういうステップで作っていく必要があるのか、説明してきます。

達成可能性の高い売上計画を作る

それでは、達成可能性が高い売上計画とはどのようなものでしょうか?具体的にみていきましょう。

Step1 顧客をグループ分けする

まずは、顧客別に直前期の売上高を入力し、その横に各顧客別の売上構成比をとっていきます。

この際に、大口の顧客から順番に記載し、取引規模の小さい顧客については、いったんその他としてまとめておきます。
次に、顧客をあなたの会社にとって重要性の高いものから、A、B、Cのグループにランク分けを行い、各グループごとに売上計画を検討するようにします。
ここでは、売上構成比率が5%を超えるグループを最重要顧客グループ(Aグループ)、売上構成比率が2~4%のグループを重要顧客グループ(Bグループ)、その他の顧客をその他グループ(Cグループ)と設定しました。
このグループ分けの基準は業種や業態、また得意先との関係によって異なってきますが、基本的には自社の売上に対する影響度で判断していくことになります。

Step2 最重要顧客グループ(Aグループ)の売上計画を作る

それでは、最重要顧客グループからみていきましょう。
グループAの顧客は、通常は古くからの取引関係がある会社であったり、過去からの信頼関係が強固に築けている会社であったりすることから、安定した売上が期待できる一方で、様々な経営環境の変化によって売上がじりじり下がっているケースもあり、場合によっては、経営に大きなインパクトを与えかねない重要な顧客グループです。
まず、各顧客別の売上高について、過去3期の推移と増減率をとってみましょう。

こう見ると、最も取引の大きいA社やC社については売上が安定的に推移しているのがわかります。一方で、D社やF社、G社については、ここ数年で売上が減少傾向なっています。

ここで、売上計画を作成する重要なポイントですが、
これまでと同じような販促を行い、営業し、販売する商品を変えないとした場合、確実に達成できると思われる売上がいくらなのか?
というのを考えてみてください。 
よくやってしまいがちなのが、よくわからないけどこれまでと同じように増えていくだろう、とか、減ることはないだろうというような楽観的な計画とすることです。
これまでと同じことをやっていても、売上が上がるかもしれませんし、維持できるかもしれません。

しかし、先ほども書きましたが、売上計画は事業計画書の最も重要なパートであり、ここが曖昧になってしまうことが事業計画書を無意味にしてしまう最大の要因となるのです。
なので、とりあえずは保守的に考え、現状のままと仮定した場合に売上見込みをこれまでの5%程度減少するものとして計画してみてください。

Step3 重要顧客グループ(グループB)の売上計画を作る

 次に、グループBの売上計画を検討しましょう。

グループBは、ここ数年で取引が始まった顧客や、そんなに大きくないロットでの取引の顧客がメインの層となることが一般的であり、中には以前はグループAであったが、ここ数年取引が減少している顧客もあり、売上が不安定となっているケースが多いのではないでしょうか。
このグループについても、先ほどと同様に過去3期の売上高の推移と増減率をとってみると、やはり売上の変動幅が先ほどよりも大きくなっているようです。
ここのグループの顧客の売上計画をどう設定するかが難しいのですが、基本はグループAと同様に「できる限り保守的に」考えます。
まず、売上がここ数年大きく増加しているH社、J社については、今後も安定した取引が見込めることから、更に増加していく可能性も十分にありますが、あえて増加しない前提とします。
また、H26年度にスポットで取引があったK社については、将来的に確実に取引があるとは考えられないため、保守的にゼロと置きます。
このように、固め固めで売上計画を想定してきます。

Step4 その他の顧客(グループC)の売上計画を作る

その他グループについては、重要性が低いため、個別にみる必要性は高くないですが、今回は少し覗いてみましょう。

M社はH26年度のスポット取引のため、計画上はよほどの強力な根拠がないと売上を考えない方がよさそうです。
N社は安定的に売上が増えてきていますが、計画上は少し控えめに増減なしで置くことにします。
O社とP社もH25年度のスポット取引なので、計画上はゼロと置きます。

Step5 売上計画の取りまとめ

 以上から、各グループごとの売上計画が設定できました。
これを取りまとめてみると、以下のようになります。

これで、STEP1における売上計画(暫定)が完成しました。
H26年度が44,600あった売上が、このままでいくと5年後には30,488まで減ることになっています。
当初の目標計画では、5年後の売上見込みが56,922であったことから、目標を達成するためには、5年後に26,434のこれまでにない売上を創り出すための取り組みが必要であることがわかりました。

この計画とのギャップを具体的な数値として把握することがものすごく重要になります。
ここまで終われば、次の行動計画の立案ステップとなります。
行動計画の立案ステップでは、この計画ギャップを埋めるために、何をしていく必要があるのか、いつからやっていくか(早ければ今日からですが)、誰がやって行くのか、どうやってやって行くのか、というのを徹底的に考え抜くという大変な努力が必要な段階となりますが、行動計画の立案ステップの準備として、まずは今回紹介しました売上計画の計画ギャップを把握することが非常に重要となりますので、ぜひともチャレンジしてみてください。

売上計画の手間を1/10にする方法

このように売上計画はきっちり作れば経営者はもとより各担当者も明確な目標設定ができるため、売上を伸ばしていくために欠かせないものとなります。
では実際に売上計画を作成するときは、今回ご紹介したようなエクセルなどの表計算ソフトで作っていくことになります。また、売上計画を単年度予算に落とし込んでいく場合もエクセルでの作業が重要となります。
エクセルは非常に便利なツールで、シンプルな売上予算であれば、作成はもちろん予算管理までできますが、いくつか難点があります。
まず1点目ですが、お金の動きを分析をするためには、ある程度の会計の知識が必要になることです。特に、管理会計の知識がないと、売上を増やしたら、コストがどのように動いて、利益がどう変わるかといったあたりの関係がよくわからなくなって、手を焼くことになるかもしれません。
次に、エクセルは非常に優れたツールでゼロベースでいろいろなことができるのですが、裏を返せば、ゼロから作らないといけないので、結構大変な作業になってしまいがちです。私たちも以前はエクセルで経営シミュレーションのサポートをしていましたが、私たちプロがやっても、1社あたり毎月1〜2時間はエクセルの作業時間を費やしていました。
ですので、経営を分析をするためには、会計の知識とエクセルなどのスキルがあればよりベターですので、大変かもしれませんが、勉強しながら経営を先読みしてみてください。
ちなみに、簡単に経営のシミュレーションをするクラウドツールもあります。
このクラウドツールを使えば、会計ソフトからデータを連携すると5分で、会計の専門知識がなくても簡単に経営をシミュレーションすることができます。
経営をシミュレーションしながら、予算管理や数字を読んだ経営をしたいという方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

国見 英嗣

株式会社ナレッジラボ 代表取締役CEO

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。