KPIとは何か?業績アップに直結するKPIの使い方

売上を増やしていく、事業を拡大していく。経営目標を達成するためには、会社やお店で働くメンバーが目標意識を持って日々の仕事に取り組んでいく必要があります。
そのような中で、具体的な業務の目標設定の指標に使われるのがKPIです。KPIは、設定する意味をしっかり理解するかどうかで、結果が大きく変わってきます。
今回は、業績アップに直結するKPIの使い方について、事例を交えて解説したいと思います。

KPIってなに?

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略であり、重要業績評価指標を意味するものです。
このように、KPIは業績を評価するための指標です。
会社でも、お店でも、事業経営であることに変わりありません。ボランティアや慈善事業として会社やお店をしている場合を除いて、経営するということは少なからずいい業績を残すことを目的としています。
KPIは、目標とする業績水準を達成できているかどうかを計測する指標ということになります。

それでは、「業績」とは何かということになりますが、経営の結果と捉えると、売上高であったり、利益であったりします。
もう少し、業績という意味を考えてみたいと思います。

業績とは?

先ほども触れましたが、会社やお店を経営する目的を経営学的にいうと、
投下した資本でどれだけ利益を上げることができるか?
ということになります。

もう少しわかりやすくいうと、
経営することで元手を少しでも増やす
ということです。

すなわち、会社やお店を経営することでどれだけお金を増やすことができるか?ということが業績の意味するところです。
元手を増やすということから考えると、業績を上げるというのは、利益を増やすということになります。

ここで、会計の話を少しします。
会計では、利益を次のように考えます。

売上高ー仕入ー諸経費=利益

これは、簡単にいうと、商品やサービスを販売して得た売上高から仕入や諸経費で出て行った支払いを差し引いたものが利益、ということになります。
ここからわかることが、業績=利益というのは、いくつかの構成要素に分けられるということです。
業績アップということを会計的に考えると

  • 売上を増やす
  • 仕入を減らす
  • 諸経費を減らす

ということになります。
このように、業績を構成要素に分けるという考え方が、KPIと密接に関連してきます。

もう一度、KPIを考える

繰り返しになりますが、KPIは、業績を評価するための指標です。
先ほどの会計の話をこれに当てはめて考えると、KPIは、「売上」を評価する指標、「仕入」を評価する指標、「諸経費」を評価する指標とも言い換えることができます。
このように考えると、KPIをかなり具体的なプロセスや業務に関連づけて設定することができるようになります。

売上の評価指標としてのKPI

売上は、会社であれお店であれ、事業経営をしていく上で最も重要なお金を供給してくれる源となるものです。
したがって、この売上を増やしていくための行動を数値化したものがKPIとなっているかどうかがポイントとなります。
ここで、売上はどのようなプロセスで獲得できるかというと、例えば、

  • お店の場合・・・来店してもらう
  • 商社の場合・・・受注をとる

となります。ここにKPIを設定できれば、売上の評価指標としてうまく機能します。
例えば、「お店に来店してもらう」という結果に対するKPIとしては、

  • ビラ配りの枚数や頻度
  • 予約件数
  • 会員客数

というような来店客数と関連の高い指標をKPIとして設定します。
また、商社の「受注をとる」という結果に対するKPIとしては、

  • 問い合わせ件数
  • 見積もり提案件数
  • サンプル提出件数

など受注につながる数値をKPIに設定すると効果的です。

仕入の評価指標としてのKPI

仕入は、売上に比べると重要性が落ちるように捉えられがちですが、実は仕入も業績には重要な影響を与えます。
先ほど紹介したように、業績は「売上」ではなく「利益」です。
売上がいくら増えても、それ以上に仕入コストがかかれば、利益は減ってしまいます。
売上が増えても業績が悪くなることもあるということです。

逆に、売上が伸びなくても、仕入コストの圧縮ができれば、業績=利益は増えます。
このように、業績アップという観点からは、仕入は非常に重要なのです。

それでは、仕入に関するKPIはどのように設定すればよいでしょうか?
これも業種、業態によって変わる部分はありますが、基本的には、必要な品質水準を確保しながら、できるだけ安価に安定調達するか?を達成する数値指標を設定することが重要です。

仕入を評価するKPIの例でいうと、

  • 新規仕入先の開拓件数
  • 相見積もり件数
  • コストダウン金額

というような指標が考えられます。
また、仕入れたものを在庫で管理するような業種であれば、在庫の管理状態を評価する指標も有効です。例えば、

  • 在庫金額・数量
  • 在庫廃棄ロス金額
  • 調達期間(発注から納品までの期間)

といった、適正な在庫水準を確保するための指標をKPIとして設定すると効果が発揮されるケースもあります。

諸経費の評価指標としてのKPI

人件費や家賃や広告費など、経営をしていくためには様々な経費が必要となります。
先ほどの仕入と同様に、諸経費のコストダウンをすることで業績はよくなります。
したがって、業績アップのためには、諸経費も重要な要素となります。
ただし、諸経費というのは、いろいろなものがあります。例えば、主なものだけでも

  • 人件費
  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 広告費
  • 外注費
  • 支払利息

など、会社によって、お店によって、様々な経費が存在します。
これを全てKPIで管理することは難しいですし、そこまでやる必要はありません。KPIを設定すべき項目のポイントは、

  • 金額が大きいもの
  • 管理すればコストダウンする余地のあるもの
  • スタッフなどメンバーのモチベーションを下げないもの

となります。

KPIを設定して管理することは手間と時間がかかります。
そのため、業績への影響が大きい項目(金額が大きいもの)を選ぶことがポイントとなります。

また、例えば、コストダウンの余地がない家賃などをKPIの対象にしても意味がないケースは、対象外にすべきです。
さらに、メンバーのモチベーションを下げないという点も重要です。KPIで管理してメンバーのモチベーションが下がってしまえば、本末転倒です。
このような点に注意して、個別にKPIの設定を検討していきます。

KPIをうまく活用するための具体例

それでは、KPIをうまく活用している具体事例を紹介しましょう。

ホームページのページビューや問い合わせをKPI設定した事例

受注の窓口として、WEBサイトを活用している会社も増えてきました。
今回ご紹介するのは、自社で集客用のホームページを作成し、そこに見込み客を集めて問い合わせを得る、という営業導線を作っている会社の事例です。

KPIとして、「ホームページの閲覧数」、いわゆるページビューを設定しています。
この会社では、ホームページに訪問した見込み客の0.1%が問い合わせをしてくれるという過去の実績から、ページビューをいかに増やすかが重要な業績評価指標と考え、KPIにページビューを設定しました。

具体的には、KPIであるページビューを「1週間に1万ページビュー」と設定し、ホームページの運用を開始しました。
ページビューの測定には、無料で利用できるグーグルアナリティクスを利用し、毎日のアクセス状況、ページビューを集めているページを把握しながら、サイトの更新や記事の作成をしていきました。

グーグルアナリティクスは無料で使えるアクセス解析ツールですが、多彩な機能がついており、これだけあれば通常のアクセス解析は十分できる便利なツールです。

運用当初は、ページビューが伸び悩んでいましたが、明確なKPIを設定したこともあり、ホームページの運用担当者はKPIの達成に集中することができ、運用3ヶ月目には目標としていたKPIである「1週間に1万ページビュー」を達成することができました。
この結果、ホームページからの問い合わせも増えて、売上アップに貢献できたという成果につながりました。

クラウド勤怠管理システムを導入し、勤務時間をKPI設定した事例

次は、従業員の残業が減らず、人件費負担が重くなっていた会社が、KPIを設定して生産性を改善した事例です。
こちらの会社は、いくつかの店舗を経営していたのですが、店舗スタッフの勤怠管理をタイムカードを使っていたこともあり、スタッフの勤務時間をタイムリーに把握することができていませんでした。
そのため、毎月の勤務時間を集計した結果、思った以上に残業時間が発生していたことに気づくということの繰り返しで、残業代の支払い負担が重くなっていました。
そこで、残業代を適正水準に抑えることを目的として、KPIに残業時間を設定しました。

また、これに合わせて、スタッフの勤務時間をタイムリーに把握するために、クラウド勤怠管理ソフトであるKING OF TIMEを導入しました。こちらのクラウド勤怠管理ソフトは、一人当たり数百円というコストで導入できる低価格なソフトですが、勤務時間のデータがいつでもパソコンやスマホで確認できることから、店舗での勤務状況をタイムリーに把握することができるようになりました。


KING OF TIMEを導入したことで、月中であってもスタッフごとの勤務時間がわかるため、残業時間が増える傾向が見えたら早めに対応ができるようになりました。
これによって、無駄な残業時間を減らすことができ、結果的に残業代の支給が減ったことで、人件費コスト負担を減らすことができました。

まとめ

KPIは達成したい目標を明確に設定することで、非常に効果的な業績評価指標となります。
達成したい経営目標や業績を明確にして、その業績を達成するためにやるべき業務を検討しながら、KPIを設定していきましょう。

この記事の監修者

国見 英嗣

株式会社ナレッジラボ 代表取締役CEO

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。