更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月26日
事業計画書のフォーマットを選択
まず、創業融資を利用する際に必要となる事業計画書のフォーマットを日本政策金融公庫のホームページからダウンロードします。日本政策金融公庫のホームページにアクセスし、
ホーム >サービスのご案内 >各種書式ダウンロード >国民生活事業
と移っていくと、以下のページにたどり着きます。
借入申込書等ダウンロード
ここから、「創業計画書」をエクセルでダウンロードします。
エクセルでダウンロードすれば、パソコンで作成できますし、編集も簡単なので、こちらをおすすめします。
また、創業融資を受けようする事業に最も近い「創業計画書記入例」も合わせてダウンロードして参考にしてください。
事業計画書を作っていく
1. 創業の動機
ここには、創業をすることに至った経緯や起業に対する想いや目的を記入します。
事業計画書で一番重要なのは、全体のストーリーです。
起業や開業が、単なる思いつきではなく、しっかり考え、準備した結果の創業であることをアピールしてください。
銀行は、創業者が、
- 開業までにしっかりと準備をしてきているか?
- 勢いだけで創業に至っていないか?
- 数字を管理する能力があるか?
などといった、「個人」の部分を非常によく見ています。
まずは、創業の動機の部分で、このあたりをきちんと説明して、銀行に創業者個人が信用するに足る人であることを伝えてください。これが、創業融資への近道となります。
2. 経営者の略歴等
「年月」と「内容」
ここには、経営者となる創業者の経歴を時系列で簡単に記入します。
基本的には、働き出してからの経歴でよいかと思います。
重要なのは、1.創業の動機で記載した内容との整合性です。
きっちり合わせる必要はないですが、矛盾がないか?一貫性があるか?という点は注意しましょう。
「過去の事業経験」
次に「過去の事業経験」を選択してチェックをつけてください。
もし、過去に経営をしたことがあり、失敗していたとしても正直に記載しましょう。銀行は、様々な情報、データベースを持っています。 先ほども解説しましたが、銀行は創業者の人間性をしっかり見ていますので、信頼関係を損なうようなことはしないでおきましょう。
「取得資格」と「知的財産権」
また、取得資格には、保有している資格があれば、「有」にチェックをつけて、かっこ内に、保有資格を記入します。
知的財産権等も同様です。こちらも創業者個人に帰属するような知的財産権(特許権や商標権など)があれば、「有」にチェックをつけて、かっこ内に、知的財産権の内容を記入します。
3.取扱商品・サービス
取扱商品・サービスの内容
この欄には、創業融資を受けようとする事業が取り扱う商品やサービスの内容を簡単に記載してください。ポイントは、販売する主な商品や提供する主なサービスと、それぞれの価格帯がわかるように記入することです。
また、売上シェアには、記入した商品・サービスが全体の売上に占める割合を記入してください。すでに営業を開始している場合は過去2、3ヶ月くらいの平均売上高から計算すれば算定できますし、もし営業開始前なら、見込みの売上比率を記入してください。
セールスポイント
ここには、取扱商品・サービスの内容で記載した商品やサービスの特色や売り文句、他との違いといった特徴を記載してください。銀行は、あなたの事業が今後も長く継続できる事業であるかどうかを見極めたいと考えています。そこで、商品力はポイントとなります。簡潔明瞭にきっちり説明しましょう。
ちなみに、セールスポイントは自由に書けるのですが、銀行にアピールしたいのであれば、やはりストーリーが重要になります。
できるだけ、創業の動機と経営者の略歴と一貫性があり、矛盾していないようなセールスポイントを簡潔明瞭に記載できるかどうかがポイントになります。
全体を見渡しながら、とにかくストーリーを意識してください。
4.取引先・取引関係等
銀行が融資を行うときに、必ずチェックするポイントがあります。
それが、「商売の流れ」です。
どこから何を仕入れて、どのようなお客様や得意先にどんな商品・サービスを販売しているのか?
商売の流れをシンプルに説明できるかどうかが、創業融資をスムーズに進められるかどうかのポイントになります。
販売先
まず、「取引先名」ですが、お店などの個人が相手の商売なら、「一般顧客」とか、「一般個人」と書き、カッコ内には、その顧客の住んでいるエリアや年齢層、職業など、その個人顧客がどのような層なのかがわかるような記載をします。法人顧客であれば、具体的な会社名と所在地を記入します。
「シェア」は、全体の売上高に対するその顧客グループに対する売上高の割合を記入します。細かいところまでわからないという場合は、概算でOKです。
「掛取引の割合」は、その顧客グループの中における現金売上以外の売上比率を記入します。現金売上以外の売上というと、イメージとしては、請求書を発行している顧客の割合と考えて大きく外れていないはずです。
「回収・支払の条件」には、その顧客グループとの主な取引条件を記入します。現金取引であれば、「現金回収」とか「即金」と記入してください。請求書を発行している場合には、その回収条件を記載します。
回収条件とは、一般的に「○日締めの○日回収」といい、得意先に対する請求書の計算期間の末日を「○日締め」、その請求書の回収期日を「○日回収」といいます。以下を参考にして、顧客グループごとの回収条件を記入してください。
- 毎月1日〜末日の販売代金を翌月の10日に回収する場合・・・末締めの翌月10日回収
- 毎月前月21日〜今月20日の販売代金の請求書を翌月の末日に回収する場合・・・20日締めの翌月末日回収
- まとめてではなく、販売した都度、販売後10日以内に回収する場合・・・販売の都度10日後回収
- 販売と同時に現金で回収する(店舗でのレジ売上などはこれ)場合・・・現金販売
仕入先・外注先
仕入先とは、販売する商品や加工する原材料などを仕入れる取引先、外注先とは、自分たちでできない加工や作業をお願いしている外注業者をいいます。
「取引先名」、「シェア」「掛取引の割合」「回収・支払の条件」については、基本的に販売先の「販売」を「支払」に変えると概ね同じですので、詳細な解説は割愛します。
人件費の支払
ここは従業員がいる場合に、従業員への給与の支払条件を記入します。 また、賞与の支給が決まっている場合には、賞与の支払月を「ボーナスの支払月」の欄に記入してください。
5.従業員
ここには、創業融資を受ける事業やお店(法人の場合は会社全体)の人員数を記入します。
記入する人数の対象者は、実際に事業やお店に従事している人を対象に記載してください。
6.お借入の状況
ここには、個人事業の場合は創業者、法人の場合は代表者の個人の借入状況を記入します。
事業に関連しない借入のみということですので、現時点においてすでに事業用の借入やビジネスローンがあっても、ここには記載しないでください。
あくまで、事業外の借入である、住宅ローンや自動車ローン、その他事業に関連しない借入を記入します。
7.必要な資金と調達方法
ここは、なぜ借入が必要かというところを数字で説明するパートであり、創業融資を進める上でのポイントとなります。
銀行は単純な赤字の埋め合わせなどという理由では基本的にお金を貸してくれません。創業融資を受けるためには、新しい事業を始めるためにこれくらいの資金が必要だということをロジカルに説明する必要があります。
必要な資金(表の左側)
表の左側には、事業やお店を経営していく上で必要な資金を記入します。
設備資金
設備資金には、設備投資したいものを記入します。例えば、次のようなものです。
- 店舗の内装や外装の工事代金
- 厨房機器の購入代金
- 製造設備の購入代金
- 賃借物件の敷金や保証金
- 営業用の車両
- パソコン・サーバー一式
運転資金
運転資金には、事業が軌道に乗るまでに必要な資金を記入します。例えば、次のようなものです。
- 新しい店舗の商品仕入資金
- 新しい商品展開するための広告宣伝費
- システム開発するために必要な外注費
- 開業準備のための人件費
金額は見積額となるため、設備資金にあたるものや金額が大きなものは、外部業者の見積書を取っておいてください。そうしないと、金額の根拠の説明ができないため、マイナスポイントとなります。
書き方のポイント
基本的には、事業を行う上で必要不可欠で、金額が大きく、価値が明確にわかるものを書いていくと説明しやすくなると考えています。
事業を行う上で必要不可欠というのは、先ほどから何度も出てきているストーリーから導かれるものということです。すなわち、この設備がないと創業の動機や組み立てた事業モデルが達成できないというストーリーを組み立てることです。
また、価値が明確にわかるものというのは、購入したものが目に見えないようなもの(例えば、よくわからないコンサルティング費用など)というものは、支出に対する効果の説明がしにくいので、価値が目に見えてわかるもの(店舗の内外装とか製造設備など物理的実体があるもの)の方がシンプルにストーリーを説明しやすくなるのではないかと考えます。
調達の方法(表の右側)
表の右側は、表の左側の資金をどのように確保するかということを書くことになります。
自己資金
自己資金とは、自分の手持ちのお金から、設備資金と運転資金に持ち出せる金額を記入します。
親、兄弟、知人、友人等からの借入
親、兄弟、知人、友人等から借入が見込まれる場合には、こちらに記入してください。
他の金融機関等からの借入
他の金融機関等からの借入が見込まれる場合には、こちらに記入してください。
日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入
自己資金、親等から借入、他行からの借入で不足する金額を、こちらに記入してください。
日本政策金融公庫の新創業融資制度においては、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要とされていますが、一般論として自己資金の比率が多いほど、創業融資の審査上は有利になるものと考えられます。全体のバランスを見ながら、調達の方法を検討してください。
最後に、表の左の合計額と表の右の合計額が一致していることを確認してください。
8.事業の見通し(月平均)
最後に事業の見通しを作っていきます。
この事業の見通しは、業種・業態によって記載する内容が大きく変わってきますので、以下の記事を参考にしながら作成してみてください。
参考記事:事業の見通しの事例の書き方〜店舗業の場合〜 参考記事:事業の見通しの事例の書き方〜受注生産業の場合〜
これでいったん完成です
創業融資は誰でも簡単に融資が受けられるものではありません。決して簡単に考えないでください。
この記事で解説したお話は、あくまでスタートラインに立つための準備であって、ここからは創業者であるあなたが、銀行担当者に対して、誠実に、きっちり説明しながら、時間をかけて銀行との信頼関係を作っていくことが重要です。
そうすることで、銀行はあなたのパートナーになってくれるはずです。