予算

会計を分析して簡単に経営をバージョンアップする方法

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。

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更新日:2020年1月9日 投稿日:2019年12月25日

会計は顧問税理士さんに全部お任せであまり見ないという経営者の方や、毎月の記帳はしないで決算や確定申告の時にまとめてやるという経営者の方がいらっしゃいます。
このような経営者の方になぜ毎月経理をしないですか?とお伺いすると、決まって面倒とか利益にならないというような回答が返ってきます。

私たちは、会計は経営に欠かせない非常に重要なツールだと考えています。あれば便利、ではなく絶対に欠かせないものだと考えています。
なぜ会計は経営に欠かせないものだと思いますか?
今回は、会計がどうして経営に必要なのか?どうすれば経営に活用できるようになるのか?という点についてお話ししてみたいと思います。

会計に対する誤解?

会計について、次のような感覚をお持ちではないですか?

  • 細かい事務作業が多くて面倒だ
  • 会計をきっちりやっても1円の利益にもならない
  • 簿記や会計の知識がないので、正直よくわからない

中小企業の経営者からみた会計のイメージってこんな感じなのかな、と思うことがあります。
毎日忙しい中で
「面倒」
「利益にならない」
「よくわからない」
から会計が後回しになり、会計事務所に全部任せておこう、という経営者が結構いらっしゃるように思います。
毎日、忙しい中で会計のような事務作業をしている場合ではないということのようです。

本当に会計は利益の役に立たないのか?

話は変わりますが、飛行機のパイロットになったと想像してみてください。
コックピットに乗り込んだら、いろいろなメーターや警告灯などの計器があります。この計器のおかげで、
「今 どのくらいの高度を飛んでいるのか?」
「燃料は残りどれくらいあるのか?」
「現在地はどこなのか?」
がわかるようになります。
ただ「飛ぶ」だけなら、計器がなくても飛べるでしょう。
計器がなくても、「早く」飛ぶだけならできるかもしれません。
しかし、
「目的地に」
「時間どおりに」
「安全に」
「到着する」
ためには計器なしでは不可能に近いと思います。
何かトラブルが発生したとき、計器が壊れていたら安全な飛行は困難になると思います。
もし、飛行機を購入するとしたら(あまり想像できないかもしれないですが・・・)、どちらを買いますか?(値段 は仮定です)
A:正確で知りたい情報が表示される計器がついた飛行機 1億円
B:アバウトな情報が1分遅れで表示される飛行機 5千万円
私なら高くても間違いなくAを買います。
Bの飛行機でまともに飛ばせる自信がありません(笑)。
経営における会計は、飛行機における計器と同じものです。
利益を出すために会計はいらない、という発想で安易に会計を丸投げする形で外注したり、事務スタッフにまかせっきりにしておくと、

  • 売上や利益などの重要な情報がすぐにつかめない
  • おカネの流れが見えず、今月来月の入金や支払さえわからなくなる
  • 目標達成のために、どれくらい売上が必要、どれくらいコストを抑える必要があるのかわからなくなる

となってしまい、計器なしで飛行を続けるのと同じような状態で経営することになってしまいます。売上には直結しないため、軽視されがちな会計ですが、何があっても墜落しない経営をしていくためには、目立 たないけど非常に重要な計器となるのです。

会計の本当のチカラとは

私たちは、会計や数字の管理という面から多くの中小企業のサポートをさせて頂きましたが、この中で、会計に対して関心が低かったり、会計を会計事務所に丸投げにしている会社において、「資金繰りが見えにくい」「数字に対する意識が弱い」という課題を抱えられているケースが多いような感覚を持っています。
会計をしっかりと使いこなし、会計の本当のチカラを発揮させることでこの課題を解決できるようになります。

おカネの流れが見えやすくなる

中小企業の大きな悩みの一つに「資金繰り」があります。
なぜ資金繰りが読みにくくなるのでしょうか?
ひとつに、おカネの流れがバラバラで管理されていて、いつどこからいくら入ってきたのか、いつどこにいくら支払ったのか、という情報がパッとみてわかる資料やデータがないことがあげられます。これを解決する ものが会計です。
おカネの動きに関する細かいデータをすべて会計に取り込むことができれば、会計データをみればおカネの 動きがすべて把握できるようになります。
しかし、多くの中小企業では、会計に手間をかけたくないという理由から、この「おカネの動きに関する細 かいデータをすべて会計に取り込む」という作業を省略しています。
実は、後程紹介しますが、この作業は経 理の流れを見直すことで簡単に実施することができます。おカネの動きを会計に取り込めば、会計データを見るだけでおカネの流れが見えやすくなるのです。

利益に対する意識が高まる

会計を外注すると、社内で作業しなくても試算表や決算書ができるようになります。
そうすると、会計事務 としては手間がかからず楽になるのですが、副作用としては、数字に対する意識が低くなってしまうという問 題が発生します。
例えば

  • 売上は意識しているが、利益が残っているかどうかはあまり気にしていない
  • ムダなコストが発生しているかもしれないが、あまり意識していない
  • 利益率が下がっているかもしれないが、細かい分析をしていない

こうなると、数字をチェックしながら経営するという意識が遠のいてしまい、どんぶり勘定になってしまい ます。
会計をきっちり把握し、数字をベースにした経営のかじ取りができるようになれば、会社全体の数値に 対する意識を高め、社内に「絶対に利益を出すんだ!」という強い意識を持たせることができます。
経営環境が安定している時や業界が順調な時、いわゆる景気がいい時は、会計を意識しなくてもおそらく会社は 順調に成長すると思います。
問題は景気が悪くなった時です。
景気が悪くなった時には、数字を徹底的に管理し、 数字の先を読みながら、緻密な経営のかじ取りをしないと墜落してしまいます。
そのためにも会計の本当のチカラ を活かすことが重要なポイントとなります。

会計の本当のチカラを引き出すためのポイント

会計にはたくさんなチカラがあるのですが、今回はそのチカラを引き出すためのポイントを3点紹介します。

取引口座を集約する

中小企業では利益も重要ですが、おカネの流れを正確に細かく把握することが非常に重要な要素となります。
でも、多くの中小企業ではおカネの流れが正確に把握できていません。
これにはいくつかの理由があります が、ひとつは、銀行口座が複数に分散していることがあげられます。
入金口座、支払口座が別々、入金口座が 複数に分かれている、という場合、口座間の振替も頻繁にしなければならなくなり、おカネの流れが見えにく くなります。
取引上の制約から、どうしてもこの銀行の口座を使わないといけないというケースもあるかと思 いますが、振込手数料が少し高いとか、昔からそうなっているからという理由で分散しているのであれば、口 座の集約を検討してみてはいかがでしょうか。(なお、次に紹介するインターネットバンキングを利用するこ とで、振込手数料は安くなります)

インターネットバンキングを活用する

インターネットバンキングというと、パソコンで振り込みや残高確認ができるというメリットがありますが、 会計に活かせる機能として取引明細をデータでダウンロードできる機能があります。
この取引明細データをダ ウンロードし、会計ソフトにそのままインポートすることで、細かいおカネの情報を手間をかけずに会計処理 することができます。
この機能は非常に便利で、会計におカネの動きをそのまま記録できるため、会計ソフトから会計データをダ ウンロードすれば、様々な形で詳細なキャッシュフロー分析をすることができるようになります。
この機能を 利用するためには、インターネットバンキングに対応した会計ソフトの選択や初期設定が必要になりますが、 この手間やコストをかけても、これ以上の効果が十分に得ることができます。
なお、インターネットバンキングを利用することで、他にも振込手数料が窓口振込よりも安くなる、振込予 約が利用できるなど、多くのメリットがあります。
また、銀行に行く頻度が少なくなり、時間や移動のコストが削減できるなど、コスト削減にもつながります ので、ぜひ一度ご検討してみてください。

試算表 “データ”を分析する

試算表は通常、会計事務所から紙で入手するケースが多いと思いますが、これをそのまま見ても売上がこれくらいか、利益 はこんなもんか、交際費使いすぎたかな、くらいしかわからないと思います。
そこで、私たちは試算表をエクセルなどのデータで入手して、これを簡単に加工することでより深い分析を するという方法をお勧めしています。
経営者として注視したい項目(例えば、売上高など)や試算表には載っていないデータ(受注データや生産 データなど)との関連性など、知りたい情報が計算できるエクセルシートを作っておいて、これに毎月の試算 表データなどのデータを貼り付ければ毎月の知りたい情報が自動計算できる形にしておくと、毎月の試算表か ら簡単に重要な経営データをとることができるようになります。

簡単に会計を経営に活かす方法

会計を使いこなすことができれば、会社の数字に対する意識が大きく変わります。
また、経営には欠かすことが できない貴重な情報を得ることができます。
会計は利益につながらないから後回しというのでは、本当にもったいないと思います。  ぜひ、一度会計について総点検をしてみて、会計の本当のチカラを発揮させてみてください。会社が変わるきっ かけにしていただけるものと信じています。
なお、実際にどのように会計を経営に活かしていくかというと、一般的には会計データを会計ソフトからエクスポートして、エクセルなどの表計算ソフトで作っていくことになります。エクセルは非常に便利なツールで、会計データがあれば、基本的な経営分析はできますし、編集などもできますが、いくつか難点があります。
まず1点目ですが、会計で経営分析をするためには、ある程度の会計の知識が必要になることです。特に、管理会計の知識がないと、売上を増やしたら、コストがどのように動いて、利益がどう変わるかといったあたりの関係がよくわからなくなって、手を焼くことになるかもしれません。
次に、エクセルは非常に優れたツールでゼロベースでいろいろなことができるのですが、裏を返せば、ゼロから作らないといけないので、結構大変な作業になってしまいがちです。私たちも以前はエクセルで経営分析のサポートをしていましたが、私たちプロがやっても、1社あたり毎月1〜2時間はエクセルの作業時間を費やしていました。
このように、経営分析をエクセルでしようとするといくつかのハードルがあって、せっかく経営にとって非常に有効な手法である経営分析が広まらない一つの要因でもありました。
私たちは、これらのハードルを取り除いて、経営分析をもっとたくさんの事業者の方に行って欲しいという思いものもとで、クラウド会計を使って簡単に経営分析できるクラウドサービスManageboardを開発しました。
無料でご利用いただくこともできますので、会計を使った経営分析にご関心がある方、簡単に経営分析をやってみたい方、経営を見える化したい方は、ぜひ一度試してみてください。

国見 英嗣

監修:国見英嗣(公認会計士)

有限責任監査法人トーマツ、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にて監査、ITコンサルティング、M&A・事業再編アドバイザリーなど経営管理領域の業務を幅広く経験。その後、株式会社ナレッジラボを創業し、代表取締役CEOに就任。

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